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第3話 聖母様って、なんですか?
1ー3 聖母様って、なんですか?
「・・なんなんだ?これは」
俺は、温かな湯に全身を浸してほっと溜め息をついた。
大きな広い陶器らしい浴槽の中には、お湯が流れ込んでいて俺の冷えきった体は、徐々に暖められていった。
さっきの若い男にここに連れてこられた時には、もう、終わりかと思ったんだが。
俺は、さっきのことを思い出していた。
男は、俺を風呂場の床に下ろすとさっさと背を向けて去っていった。
俺は、風呂場にいた数人の使用人らしい男たちの手で裸にされ全身を洗われ、湯船に浸けられると、手足をマッサージされた。
そのときには、もう、意識が朦朧としていたので抵抗することもできなかった。
だが、体が暖まってくるにつれて、俺は、恥ずかしさで頬が熱くなった。
俺は、しばらく、1人でお湯に浸かって辺りをうかがっていた。
男たちは、俺から離れると、壁際に並んで動かなかった。
俺は、部屋の中を見回した。
いかにも異国風の作りの白い壁の小綺麗な部屋だ。
俺は、さっきの男のことを思い浮かべていた。
あいつらは、何者なんだ?
ここは、日本じゃねぇよな。
なら、ここは、いったい、どこなんだ?
俺の脳裏にあの連中の言葉が思い出された。
「聖母様」
そう、やつらは、俺のことを呼んだ。
というか、聖母って、何?
俺は、自分の外見を思い浮かべてみた。
じいちゃん譲りの三白眼の俺は、それなりに整った顔をしている方だったが、身長180㎝で、がっしりとした筋肉質の体をしている。
どこをとっても、聖なる母なんてもんじゃねぇし!
「どうかされましたか?聖母様」
「その、それ、さ」
俺は、男たちに訊ねた。
「聖母って、なんのことだよ?」
「もちろん、あなた様のことでございます」
男たちは、俺に頭を垂れた。
「あなた様は、この世界の神子様の、そして、将来のこの国の王となるお方の母上様となられる方でございますから」
はい?
俺は、意味がわからなかった。
どういうこと?
すっかり体が暖まってほっこりした俺は、風呂から上がると問答無用に回りの連中に体を布で拭かれて素肌の上に白いワンピースみたいな服を着せられた。
そして、俺は、浴室の外で待っていた白いフードを着た男たちに引き渡され、薄暗い廊下を案内されていった。
俺の通された部屋は、驚くほど豪華なリビングルームだった。
そこのふかふかのソファに座らされた俺に、さっきの若い男と見覚えのない2人の男たちがひざまづいた。
「挨拶が遅れてしまい申し訳ありませんでした。私は、この国の皇太子 レイテ・リア・リーゼンベルクでございます。本来なら、父王がご挨拶致しますところですが、あいにくと父王は、今、病気で床についておりますもので、私のみのご挨拶となります」
さっきの男の隣にいたちょっと小柄で可愛い顔をした金髪の美少年がそう口上を述べると俺の手をとって口づけた。
「ふぇっ?」
驚いて、俺は、慌てて手を引き抜いた。
なんだ、この連中は?
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