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第28話 堅い決意
3ー7 堅い決意
俺の言葉にアメリは、ほっぺたを膨らませて拗ねていたがどうにかここで俺に手をだすことは諦めたようだった。
俺は、イーサンの方を見た。
イーサンは、目を閉じて何かをぶつぶつ呟いていた。
「何をしている?イーサン」
「・・神殿の経典を唱えています」
マジか?
そんなので大丈夫なのか?
俺は、心配だったがどうやらイーサンは、これがてきめんに効くらしく、すぐに落ち着きを取り戻した。
「見て!レン」
アメリが馬車の窓から身を乗り出して叫んだ。
「王都だ!」
王都 リスカンブルは、周囲を高い城壁に守られた城塞都市だった。
俺は、馬車の中から通りを行き交う人々を眺めていた。
通りに軒を並べた屋台の亭主たちの威勢のいい呼び込みの声やら雑踏のざわめきやらに、いやがおうにも俺の胸は高鳴っていた。
こんなに人がいるとこに来たのは、中学の修学旅行で東京に行ったとき以来だ。
俺は、今まで暮らしてきていたもとの世界のことを思い出していた。
西日本にある田舎町。
どこにでもあるような小さな町だった。
俺は、いつか、町から出ていくことを夢見ていた。
だが、まさか、異世界に来ちゃうとはな。
驚きだな。
俺は、賑やかな街の様子に感動していた。
さすがは、王都だ。
ここでこれから3年間暮らすことになるのか。
これから、ここで俺は、いろんな人と出会ったり、冒険したり、勉強したりと楽しい毎日を過ごしていくんだ。
俺のテンションは、ますます高まっていた。
「ああ、ここでこれからレンと暮らすんだな。楽しみだなぁ」
アメリが言って、俺は、びくっと体を強ばらせた。
すると、イーサンが憮然として付け加えた。
「私もいることをお忘れなく」
そうだった。
俺は、別の意味でドキドキとしてきていた。
こいつらも一緒なんだった。
ダメだ!
俺は、拳を握りしめ、背筋をただした。
気を抜いたらやられちまう!
ここで、俺は、清く正しい学園生活を無事に送るのだ。
王様にも、アメリにもイーサンにも、誰にも許したりはしない。
頑張れ、俺!
貞操を守り抜くんだ!
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