107 / 123

第107話 愛おしい命

10ー3 愛おしい命 そうして。 気がつくと、俺は、この2人と一緒にベッドに横たわっていたわけだった。 俺は、すでにきれいに清められていた。 けれど。 俺の体には、あちこちにこいつらにつけられたらしい跡が残されていた。 そりゃもう、一目でやられた跡だってわかるぐらいに。 俺は、2人に挟まれてしくしく泣きながら掛布の中に潜り込んでいた。 そこに降ってきた言葉がこれだった。 「「俺たちに名を与えてくれ」」 どういうことですか? 俺は、2人を交互に見つめた。 「「頼む、レンタロウ」」 なんだよ? 俺は、ムカついていた。 こいつらに、ではない。 こんな目にあわされても、不思議とこいつらを憎むことができずにいる自分自身に、だ。 「・・り・・」 「「なんだと?」」 2人が俺の方へと身を乗り出してきたので俺は、喚いた。 「お前は、ヒカリ、だ」 俺は、光の精霊王を指差して叫んだ。 「そして、お前は」 俺は、魔王を睨んだ。 「マオ、だ!」 俺がそう言ったとたんに、2人が光を発し始めた。 「私は、ヒカリ」 ヒカリの精霊王が噛み締めるようにその名を口にした。 魔王もまた光に包まれながら、己の名を呟いた。 「マオ・・私の名は、マオ・・」 2人の体が光に包まれて。 「「レンタロウ」」 眩しい光に包まれて、俺は、思わず目を閉じていた。 「「ありがとう、レンタロウ」」 2人に抱き締められるのがわかった。 俺は、2人の温もりを感じてそれに身をゆだねていた。 心地よい感覚が、俺を包んでいた。 「「我々を宿命から解き放ってくれてありがとう」」 ありがとう 気がつくと2人の姿は、消えていた。 俺の胸の中に、ひんやりとした感覚があった。 アメリに続いて、あの2人も、失うことになったのだろうか? そのとき。 ずくん、と俺の体の奥が疼いて、俺は、腹に手を置いた。 暖かい。 「ヒカリ・・マオ・・」 俺は、呟いた。 「ここにいるのか?お前たち」 俺は、自分の体の中に宿った、もう1つの新しい命を抱き締めた。 なんで? 俺は、男なのに。 こんな、子供を孕んで、しかも、出産するなんて、考えられないのに。 なんで、俺は、こんなにこの命たちが愛おしいんだろう?

ともだちにシェアしよう!