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プロローグ
知っていた。
自分がその為に養われていたことを。
予感していた。
自分がそうなってしまうかもしれないということを。
だけど、どうしてこの時だったのだろう。
どうして僕が天使にならなければいけないのだろう?
王国に王が降臨した、という報は、二週間後この村に届けられた。
ここは王国の西の外れにある、森の中にある村だ。この村は森の比較的浅いところにあり、あまり魔物の被害は受けない。そうはいっても被害は0とはいかない。それでもここに村があるのには理由があった。
「ウイ、これへ」
「お呼びと伺いました」
長老に呼ばれていると聞き、嫌な予感が止まらないまま長老が住む館へと向かった。
「ウイ、お前はまだ童貞であったか」
「はい」
二十九歳と十一か月。あと五日で誕生日を迎えるという時だった。
「では二日後の予定はなしだ。五日後、お前は”鬼”に嫁げ」
「……わかりました」
僕に逆らうすべはない。全てこの時の為に村人の一部は育てられているのだ。
「……質問をしてもよろしいですか?」
「かまわぬ」
「王が降臨された、ということで間違いないでしょうか」
「そうだ」
何故この時なのだろう。僕は頭を下げたままぼんやりと思った。
王が降臨しなければ僕は二日後に友人に筆おろしをさせてもらって、村を出て行く予定だったのに。
「ウイ、お前は誕生日まで童貞でいなければならぬ。だから貞操帯をつけさせてもらう。洗浄魔法は使えたな」
「はい、使えます」
「ではそれで身を清めよ」
「わかりました」
服を剥かれ、洗浄魔法をかけられて長老の前で貞操帯をつけられた。魔法で鍵をかけられたそれは魔法をかけた者が解除しなければ取れないようになっている。ものすごい屈辱ではあったがこれは始まりにすぎない。鬼に嫁げは毎日犯されることになる。それも相手は一体とは限らない。三体にも、四体にも、下手したら森中の鬼に犯されるかもしれない。恐ろしい想像をして、僕は身震いした。
王が降臨したことは喜ばしいことだ。王が降臨すれば世界の天変地異は収まり、気候が安定して人々は繁栄する。ただしそれと同時に魔物も活性化してその数が増え、森から出て人を脅かすようにもなってしまうのだ。
その魔物たちを抑える為、僕は生贄として「鬼」と呼ばれる人型の魔物に嫁ぐこととなったのだ。
だがただの人の身では「鬼」に犯されれば死んでしまう。鬼はとてもでかく、鬼によっては巨人族よりも大きい者もいると聞く。体格に合わせてイチモツも巨大で長いそうで、普通なら犯されただけで死んでしまうだろう。
だが僕は「天使」候補だ。三十歳まで童貞でいた者は「天使」となり、イチモツを受け入れて精を受け続けなければ死んでしまう。その尻穴は丈夫で、どんなに巨大なイチモツを受け入れても裂けず、かえって感じまくってしまうようになると聞いている。自分がそうなるのか半信半疑ではあるがそういうものだというのだから受け入れるしかない。
だって僕はこの為に養われていたのだから。
「では誕生日まで穏やかに暮らすがいい。貞操帯をつけているから万が一はないだろうが、もし童貞を失った場合でも魔物には差し出すからそのつもりでいるように」
「わかりました」
逃げ場なんかあるわけがない。
僕はこれからの自分の境遇を思い、そっと自分の身を抱きしめた。
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