1 / 2

一握りの噂

遊馬(あすま)先輩ってさ、常に彼女尽きないよね」 「あの見た目だしね、無理もないわ」 「遊馬(あすま)くんになら遊ばれても良くない?」 わかるー!と盛り上がるサークルの女子達の ピンク色の声が否が応でも耳に届く 「また言われてますね、先輩」 クククっと笑いながら 「まぁ無理もないすね」と煙草をふかす白兎(しらと) 「お前さ、一応俺先輩なんだけど」 「だから慕ってるじゃないですか、先輩」 ふー、っと反対側に煙を吐き出し ニコッと笑いかけてくる 語尾に悪意マシマシでわざとらしくつけてくる『先輩』はどうにかならないものなのか こいつの方が八方美人な分、俺よりよっぽどタチが悪いと思う 「あれ、今日は吸わないんですか?」 トントンっと今時の大学生、無論ハタチのガキには珍しい紙煙草を指で弾きながら勧めてくる 「禁煙中」 「どんな風の吹き回し?」 差し出した手を下ろさずいる白兎に 「なんでもいいだろ」と返すと 「やっぱり成人(なりと)くんここにいた〜!」と良いのか悪いのか絶妙なタイミングで 留里(るり)が少し息を切らしながら現れた 「あぁ白兎ごめん、俺行くわ」 「この人が新しい彼女さんですか?」 そうだよと返すと、少し広角を上げてふぅんとタバコの火を丁寧に消してから「初めまして、遊馬くんに可愛がられてる後輩です」と留里の顔を覗き込んだ 「あ、はじめまして。後輩ってことは私と同じ歳?」 「そ、こいつ白兎。留里と同じ二年だな」 「へぇ、彼女さん年下だったんですね」と、もの珍しそうに言ったかと思えば、 じゃっ、お幸せに〜とヒラヒラ手を振りながら去っていった 少し呆気に取られた留里を見て 「変なやつだろ、ごめんな」と呟くと、 いいのいいの帰ろ!と無邪気な笑顔で手を引く 「あ、そういえばタバコ吸ってなかったね!」 「吸ってほしくないんでしょ?約束は守ってるよ」 「さすが成人くん!」         「なるほどね、だから禁煙って訳か」

ともだちにシェアしよう!