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第11話

 廊下を渡りきり、母家の丁度鬼門の位置にあたる場所に離れはあった。離れの扉は重く、使用人と洋二が二人で開ける。中からは獣の匂いと糞便の匂いが混ざった悪臭が漂ってきた。中に入るとそこは裸電球が一つある六畳ほどの部屋で、壁や床すべてコンクリートがむき出しである。  そこは美佐子の一件があるまでは物置として使っていたと言うことだったが、どう考えても元は座敷牢の類で、おそらく以前は障りが出た者をここへ幽閉していたのであろう。  部屋に窓はなく、美佐子は壁に打ち付けられたアンカーから伸びる鎖に首を繋がれ全裸だった。部屋の隅に排泄物がある。それだけの部屋だ。  家具の類は破壊される恐れがあるとはいえ、あまりの仕打ちに俺は顔をしかめる。しかし神川先生は顔色を変えず、涙を流す頼子の背中を擦りながら「お辛いでしょうがもう少しの辛抱です」と言葉をかけていた。  俺たちは憑き物落としの準備に取り掛かった。心配そうな顔の頼子と洋二に離れから出てもらい、俺達と美佐子だけにしてもらう。

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