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第74話
翌朝、昨晩のことを九条に言おうか迷ったが、別に一人で対処できたし余計に心配させるのも気が進まないのであえて言わなかった。それにしてもあの男、そういう意味の感情を抱いていたのか……しかし全く見覚えはない。職業柄沢山の人に会うのだが、俺は仕事上で会った人の顔を覚えるのは得意なので仕事上あっていたら覚えているはずである。となると仕事以外で会った人間ということになるが、俺は仕事以外で人に会わない。九条くらいしか会っていない。元々神川先生に恋心を抱いていたので元恋人の類は居ないし、友達なら流石に顔はわかるし……というわけで全く覚えのない相手に劣情を抱かれていることになる。
従って残る可能性はご近所さん……このマンションとか、近辺に住む住人に絞られる。なのでこれからはご近所さんと会うたびに顔を確認して警戒する必要がある。
生き霊のほとんどがそうなのだが飛ばしている人間は無意識なのだ。だから「あなた俺に生き霊を飛ばしてますよね?」なんて聞いても相手が無意識の場合自覚がないので、生き霊を飛ばすのをやめてはもらえないし、こっちの頭がおかしいと思われて通報される可能性すらある。
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