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 その出会いは偶然だったけれど、俺らにとってはきっと必然で、運命のようなものだったんだろうな。 屋上をステージに Chapter1 … ニアミス  面白いことなんて何もない。そうずっと思っていた。 「次はカラオケ行くべ」  散々ゲーセンで遊んだ後、隣でヘラヘラ笑っている男がさも当たり前のようにそんなことを口にする。 「……つか、部活は?」 「はあ、部活だあ?」  んな()えること言うなよとバカ丸出しで笑う男の言葉に心の中で舌打ちしながら、 「冗談だって。ついでに女の子も呼んじゃう?」  なんて、思ってもいないことを口にした。  どうしてこんなことになってしまったんだろう。今から(さかのぼ)ることちょうど二年前。高校に入学したばかりの頃の俺は、希望に胸を踊らせていたはずなのに。  高校生になったら思う存分好きなことをして、そのために死ぬ気で勉強して今の学校、東高校に合格した。直ぐさま希望を胸に憧れの部室のドアを叩いたはずなのに、数日もしないうちにその希望はズタズタに打ち砕かれてしまう。  部員は部活動とは名ばかりの雑談に花を咲かせ、部室は荒れ放題。片隅に追いやられた(ほこり)をかぶった楽器や機材、お宝であるはずの古いドーナツ盤の山が悲しかった。  東校の伝統とされていた軽音楽部の全盛期はとっくに過ぎ、俺が入部した頃にはすっかり(すた)れてしまっていたのだ。メンテナンスさえしっかりしていれば今でも現役だったはずの年代物のプレイヤーも、レコードが一回転しただけで動かなくなった。 「やっぱS女の萌衣(もえ)たちか?」  こんなはずじゃなかったのに。なんのために偏差値もそれなりの進学校、しかも男子校、私立の東高校に入学したんだよ。  ただただ音楽が、バンドが本気でやりたかっただけなのに、俺は先輩たちにならって見た目がそれらしくなっただけだ。 「出ないよ。電話」 「柴田が電話したら出るんじゃね?」 「なに俺、軽く無視られてる?」  金髪に近い茶髪。長めの髪。邪魔な前髪はピンで止めてある。子供の頃に実の親に空けられた、少々、いわくつきのピアスホール。  その数も高校生になって増え続け、今は耳たぶだけでは飽き足らず、耳のてっぺんの軟骨にまで空けてある。 「軽くじゃないじゃん。つか、自覚なし?」 「うそっ、ガン無視?!」 「いいから柴田、電話してみろよ」  そう言われて、言われるままに電話した。

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