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思わず慧の頭を撫でてしまったのは条件反射のようなもので、まさか男を膝枕する日が来るとは思わなかったんだからしょうがない。
「弓弦。顔真っ赤」
ぶはっと吹き出した慧はそう続け、外していた眼鏡を定位置にかけ直すと、いきなり俺の首に腕を回してきた。
ドキドキうるさい胸の鼓動。
「弓弦、彼女とそんなことやってるんだ」
「ち、違っ……」
違わなかったけど、思わず全力で否定してしまう。いつかのように鼻先3センチ。許容範囲を越えた近距離で、慧からまっすぐ見つめられる。
こんなの無理だ。この状況で真っ赤にならないわけがない。例え向かい合った相手が、自分と同性の男だったとしても。
あと少しだけ顔を近づけると鼻が、唇が触れてしまう。
そんな近距離に、目の前に自分の一番好きな人間がいるんだから動揺しないはずがない。
「――っっ」
その距離がゆっくり近づいて、思わずぎゅっと目を閉じた。その瞬間、慧がかけている眼鏡がカチリと俺の鼻先に当たる。
「ぶふっ。なんで目を閉じるの。ねえ弓弦、こっち見て。今すぐ目を開けないとキスするよ?」
耳元で甘く囁かれた言葉に慌てて目を開ければ、目の前にいつもの、俺が大好きな悪戯っ子のような笑顔――。
――だめだ。死んだ。キュン死んだ。絶対、今ので心臓が止まった。
こんなじゃ、命がいくつあっても足りないよ。
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