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01
「ようやく手に入れた」
「――っっ」
そう呟いて、慧はそのものを抱く腕に力を込めた。慧の腕の中には俺……、じゃなくて一本のビンテージギター。
Chapter 1 ... 現状
しかも物凄く優しい目つきで見つめながら、とても優しい手つきでそのなめらかなボディー撫でている。
『弓弦、付き合って』
あの後、なんとか息を吹き返して何度も頷いた俺に、
『よかった。じゃあ、放課後。ジングルで』
事もなげに、慧はそう言った。
「なんだ、そう言うことか……」
「ん、弓弦? どうかした?」
もしかして、もしかしてだけど勘違いをしちゃったのだろうか。俺ってば。
「あ、いや。よかったね」
「うん。ありがとう」
覚悟を決めて告白しようとした矢先に慧からの『付き合って』だったから、てっきり、その……、俺の言いたいことを慧が代弁してくれたような気がしたのだ。
その日の放課後。俺は慧に『付き合って』いつもの楽器屋にまでやってきた。
「これさ。お取り置きしてもらってたんだよ。やっとローンが終わって俺のものになったんだ」
弓弦に一番に見せたかったとそう言われたら、もう告白云々 はどうでもいいと思ってしまう。
慧が手にしているのは有名メーカーのカスタムギターで、中古ながら二年前で50万円の値段がついていたものだ。二年前、ローンというか、店長にお取り置きしてもらった慧は、全額分を払い終えた今日、ようやくそれを手に入れた。
(……ま、いっか。慧、めっさ嬉しそうだし)
高校生で50万は、それなりに高額の部類に入るだろう。世界的に有名なメーカーのビンテージになると2000万だとかの世界で、一本、100万はくだらないのだが。
「本格的なのは大学を卒業して、完全に独立してからだな。分不相応だし」
と、慧は笑った。
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