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結局、どうやら俺は早とちりしてしまったようで、なんだか一気に気が抜けてしまった。
「慧」
「ん?」
「どうせならファーストライブに間に合ったらよかったね」
「ん。けど、きっちりローンを完済してから手に入れたかったからさ」
ギターに慣れるまでに時間も掛かるしと笑う慧を見て、いつ、ちゃんと告ろうかと思いを巡らせる。
「それより弓弦は、何か買うものはないの?」
「俺? 今回は大丈夫かな。ドラムスティックも大量にストックがあるし」
大量に積み上げてあるドラムスティックをちら見して笑うと、慧も俺に釣られるように笑った。親子ともどもドラマーの我が家は、ドラムスティックは買うまでもなく親父が大量に常備してある。
「そっか。じゃあ、この後どうしよっか」
「え?」
「今日は練習もないし」
ファーストライブが終わった数日は、朗さんの仕事の都合と俺達の試験でしばらくSSRの活動は休止することになっている。楽器屋にも『付き合った』し、これで終わりだと思っていた俺は、悪戯に胸がときめいた。
時刻はまだ午後5時を少し回ったところで、門限(あってないようなものだけど)まではまだ時間がある。
「……うち、来る?」
そしたらそう言われて、
「い、行くっ!」
「……ぷっ。あははっ」
まるで幼稚園児のように、思いきりいいお返事をしてしまった。
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