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第8話 身に纏う死の影
こいつは一体何を言っているのだろう。
「人違いでは?」
「冒険者はパーティ行動が義務付けられている。にもかかわらず、昨日お前は一人で町を出て、ここに来たな? なぜそんなことをした? ネクロマンサーよ」
まるで町の|警備兵《ガード》のような物言いをしているが……こいつら、ガードではない。その身に纏う死の匂い。アサシンか……なぜアサシンが私を追いかけてきたのだ?
「退会届をギルドに出した。私はもう冒険者ではない」
「戒厳令が出されてすぐ、お前は町を出た。昨日、町を出た冒険者は、お前一人だ」
「だから逃げたのではない。引退したのだ」
なぜ? なぜだ? 王女誘拐? 窃盗? 何を言っている?
「玉璽をどこへ隠した」
男のその言葉に、私は恐怖した。こいつらにとっては、誘拐された『王女』よりも盗まれた『玉璽』のほうが大切なのだ……
男の腕が微かに動く。こいつら……初めから、私を殺すつもりのようだ。本当に捕らえるつもりなら、町のガードが来るはずだろう。
話は通じそうにない。逃げなければ。なぜこんなことに……
「分かりました。一緒に行けばいいのでしょう?」
そう言って、何も持っていない両手を上げる。一瞬開けて、私は後方へと走り出した。
「逃げたぞ!」
木の間を縫うように走る。しかし、どう考えても奴らの方が足が速そうだ。
どうする?
こんな身に覚えのないことの為に、リィンと離れ離れになるのはまっぴらごめんだ。せめて、魔銃があればやりようもあるのだが、今更後悔しても始まらなかった。
突然、足に激痛が走る。足がもつれて、転倒してしまった。足を見ると、ナイフが刺さっている。
後ろを見ると、三人の男たちがフードの奥から冷たい眼で俺を見つめていた。
「私は何もしていない! 何かの間違いだ!」
そう懸命に訴えても、彼らの様子に変化はない。足に刺さったナイフを引き抜き、力いっぱい投げる。それを軽くかわすと、男は手を上げた。その手から放たれるであろうナイフから逃れる為に、私は地面を転がる。
と、その視界に、右手を前に差し出したリィンの姿が見えた。
「リィン、来ては……」
しかし、その言葉を言い終わらないうちに、リィンの右手から炎の矢が放たれた。
私の後ろで、断末魔の叫び声が上がる。振り向くと、全身を炎で覆われた男が、踊りながら倒れていった。
「レヴナントだ! 退け!」
その声にまた一本、リィンの放つ炎の矢が飛んでいく。声を出した男に突き刺さると、全身から炎が上がった。男は苦悶の叫び声をあげながら、燃やされる。最後の一人は、木々の合間を縫って、逃げていった。
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