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第82話

「彼は、大分変わりましたね。落ち着いた少年になりました」  ロビーの去った方向を見ながら、ルイが呟いた。 「そうだな。頼もしい親衛隊員になりそうだ」 「はい。王様の御代は安泰ですね」 「だといいが」 「ご安心ください。私がいれば、怖いものなしでしょう?」  ルイがニコリと微笑むと、アンドレイは周囲に人がいないことを確認し彼の腕をグイと引き寄せた。するとルイはその反動でアンドレイの膝の上に座る形になった。そして、アンドレイの方から不意打ちの口付けをする。  それを受けたルイも、アンドレイの肩に腕を回しより一層口付けを深くしていった。 「そうだ、先ほど書状が届いたであろう?」  ひとしきり口付けに夢中になった後に、ルイを隣に座らせたアンドレイが何気なく切り出した。 「あぁ、はい。何が書かれていたのですか?」 「ジョージの件だ。ジョージの両親は、私の養子として世継ぎにしてもらえるなら喜ばしいと言ってくれている。この件は、良い方向に進みそうだ」  アンドレイが結婚をしていないことに周囲は疑問を持っているが、自分が子供を作れない身体だと説明したところ、ジョージの両親はあっさりと信じてくれたらしい。もちろん、別の意味で子供を作れないのは間違いないのだが。 「そうでしたか。安心いたしました。お子様としてお迎えになられましたら、私も精一杯ジョージ様の御世話をいたします」 「よろしく頼むぞ」 「はい」  頼もしい表情を見せたかと思うと、ルイは表情を少し曇らせた。何か心配事でもあるのだろうか。 「どうかしたのか?」 「いえ。ジョージ様が、私に懐いていただけるのか不安になりまして」 「ははは。大丈夫だろう。そなたは優しいしきっと子供の扱いは上手いだろう」 「王様……」  今度は感極まり目を潤ませるルイ。 「まぁ、そなたは私にも容赦ないこともあるがな」  アンドレイが意地悪げに言うと、ルイは顔を赤らめた。 「わ、私がいつ容赦なかったというのですか?私は常に王様に対し紳士的でありたいと願っているのですが」 「夜の時とか、な」 「ば、馬鹿なことを言わないでください!王様があまりに可愛いからいけないのです」  ルイはそっぽを向いてしまった。 「そう拗ねるな。私はそなたが隅々まで求めてくれるのが嬉しいのだ」  横を向くルイの頬に、アンドレイは一瞬の口付けをした。 了

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