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第17話

「い、今まで自分の欲を受け入れることができなかったんだ。……だって、相手はいないし、一人で満足できるものでもないし……。でも君はありのままの俺を見てくれるし、痛いことでも苦しいことでも、そこにはちゃんと愛情があるってわかるから、嫌じゃない。千隼君になら、与えられる物が何であれ嬉しい。」 ハッキリと想いを伝えた絢瀬。千隼は軽く目を見開いてそれから目尻を和らげる。 「カラーも、凄く嬉しかった。俺のことを考えてくれたから、指輪にしてくれたんだよね……?その気遣いも全部、俺のことを愛してくれてるんだなって思えて……」 「ああ、もう……可愛いな……」 千隼は絢瀬と指を絡めて、そっと唇にキスをした。 「絢瀬がいい子にしているなら、何でもあげるよ。」 「ぁ……何でも……」 「うん。何?欲しい物あるの?」 千隼がそう聞くと、絢瀬はぐっと唇を噛んだ。 言いたいけれど、言うか悩んでいるらしい。 「say(教えて)」 「っ!……ぁ、あの」 「うん」 「な、何も、隠し事を、しないでほしいって言うのは、聞いてくれる……?」 「隠し事?」 思ってもみなかった欲しい物に、千隼はキョトンとする。 隠し事。隠し事?心当たりが無くて首を傾げた。 「い、今じゃなくて、これから、ずっと」 「何でそれが欲しいの?」 「ぅ……お、俺は、おじさんだから、君がいつ俺を手放すかわからないだろ……?だから、嫌だと思ったことをその度に直せたら、捨てられないかな、って」 「……俺が絢瀬を捨てるの?」 「うん、君に飽きられる可能性はゼロじゃないから……。」 「……俺、信頼されてないんだねえ。」 「そうじゃなく!」 焦りだした綾瀬に千隼はくすくす笑って、「わかってるよ」と言った。途端に綾瀬はほっと息を吐いた。

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