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第一章 僕と健斗と司さん
ハーブの花咲く夏。
「今年もがんばって、咲いてくれたね」
毛利 実由(もうり みゆ)は、アパートのベランダに植えたミントに笑顔で話しかけていた。
平和な土曜日の、夕暮れ。
「宿題も済んだし、今夜は食後にミントティーを……」
そこに突然、平穏をかき乱す音が。
チャイムを連打し、ドアを叩く騒音の主を、実由はすぐに悟った。
幼馴染の、飛永 健斗(とびなが けんと)だ。
そしてこんな風に、乱暴に訪問してくる時は必ず。
「実由~! 俺、またフラれちゃったよ~!」
ドアを開け、顔をのぞかせた実由に、健斗は泣きついてきた。
溜息をつきそうになるところを抑え、実由は健斗の頭を撫でる。
「よしよし。今夜は泊ってく?」
「うん!」
残念会をしようね、と優しい実由に、健斗は続いて部屋に上がった。
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