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第八章・2
「秀孝さんのことは、好きだよ」
「好き? 健斗くんのことは?」
「……大好き」
やっぱり、と司は実由の頬にその大きな手のひらを当てた。
「健斗くんのこと、振り切れないんだね」
「だけど、仕方がないじゃん。健斗は、淳さんと付き合ってるんだから」
そこで司は、空気を吐くように小さく笑った。
「いつまで続くだろうね、健斗くんの恋は」
「え?」
「もし、淳くんと別れたら、健斗くんは、どこへ帰ればいいんだろう」
「う……」
そうだ。
僕が秀孝さんと付き合ってたら、健斗はここには来ないだろう。
「司さん。僕、秀孝さんと別れた方がいいのかなぁ?」
「そうは言わないよ。その秀孝くんと一緒だと、楽しいんだろう?」
「うん」
「だったら、このままで様子を見るのも、一つの手だよ」
そんなずるい手を、大人の司は提案した。
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