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第八章・3
健斗は、淳さんと付き合って。
僕は、秀孝さんと付き合って。
「じゃあ、司さんは? 司さんは、僕と別れないの? 僕には彼氏ができたのに」
「別れないよ」
即答だった。
「私には今、絶対に実由が必要なんだ」
司はそう言って、身を起こした。
それとも。
「別れて欲しいの? 実由は」
「う……」
健斗のことが、大好き。
秀孝さんも、好き。
そして実由は、司のことも好きなのだ。
そんな彼の頭を優しく撫でて、司は静かに言った。
「実由が私のことを嫌いになるまで、このままでいさせて」
僕が司さんのことを嫌いになんか、なるわけないのに。
大人は、ずるい。
「ずるいよ、司さんは」
「そうだよ。私は、ずるいんだ」
そして司は、ネクタイを締めなおした。
「今夜はもう、帰るよ。実由、明日も学校だろう?」
ハーブティー、美味しかった。
去り際にキスをして、司はアパートを出て行った。
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