60 / 100

第八章・4

「何だか、余計にややこしくなっちゃったみたい」  一人になった部屋で、実由は唇を少しとがらせた。  まさか、司さんがあんなにハッキリ言うなんて。 『別れないよ』 『私には今、絶対に実由が必要なんだ』  必要とされるのは嬉しいが、司の少し黒い部分を見た気分だ。 「大人はさ、ずるいよね」  司の残していったポチ袋は、今夜はパグの柄だった。 「こんなに可愛いグッズ、どんな顔して買ってるんだろ」  くすっと笑い、紙幣の入った袋を手に取ると、携帯が鳴った。 「誰だろ、……秀孝さんだ」 『こんばんは、実由』 「秀孝さん。どうしたの?」 『今から、君のアパートに行ってもいいかな?』 「え!? い、今から!?」

ともだちにシェアしよう!