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第1話
その家には古くから言い伝えがある――
「兄ちゃん!こっち、この蔵に古そうな巻物があったの!」
「ちょ、早いよ、っ……優希……っはぁ、は……っ、はぁ……」
いつものように学校終わり弟の優希 と家で探検ごっこをしていた。
家は社家 と呼ばれる神社の奉祀をしている家系で、よく宮司の父と巫女である母の手伝いをしていて、その日は手伝いはいらないから遊んできなさいという母の言葉に甘え、弟の優希と家の神社の境内(けいだい)で遊んでいたのだが、優希が突然、変な巻物を見つけた!と言うので後を追ってこの蔵へと辿りついた訳だ。
「本当だ、こんなところに蔵がある。ていうか優希、勝手に中に入ったの?」
「だって、鍵がかかってなかったし……」
「お父さんたちに見つかったら怒られるよ」
「少しだけ!巻物の中身見たらすぐに帰るから!ね、お願い兄ちゃん」
お願いと必死に頼み込む優希に根負けして「はぁ」と短い溜め息を一つ。
「見たらすぐに帰るからね?」
するとすぐにパァッと笑顔の花を咲かせる優希に苦笑が漏れる。
蔵の中は薄暗くてじめじめとしていて、使われていないからか少し埃っぽい。
「だけど、よく巻物なんて見つけたね」
「実は蔵の扉が開いててさー、気になって入ってみたら偶然見つけたの!どう?俺凄くない?」
ドヤァという顔をして胸を張る優希に「はいはい、すごいですねー」なんて適当に相槌を打って優希の後に続く。
中は結構広くて、多くの骨董品などが棚に所狭しと置かれていた。埃が被っているもののどれも高級そうな壺やら花瓶やらで壊さないよう慎重に進んでいく。
「ほら、これだよ」
進んだ先の奥は、更に薄暗く少し肌寒い。
優希が小さい小箱の蓋を開け見せてくる。そこにはくすんだ色の古びた巻物が一つ入っていた。
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