2 / 10

第2話

古びた巻物は歴史を感じさせ、開けばすぐに破れてしまいそうな程だ。 「何か書いてあるのかな?」 「きっと宝がある場所が書かれてるのかも!財宝が眠ってるとか!」 そう言いながら優希が目をキラキラさせてくるものだから本当に宝の眠る場所を記したものかもしれないなんて柄にもなく思ってしまう。 「とりあえず見てみようか」 心做しか胸を弾ませながらそう言うと「わかった、いくよ」とゴクリと固唾を呑み込み、優希が巻物の紐を丁寧に解いた。 巻物の中には達筆な字である言葉が綴られていた。 「なになに……?  双子が生まれし時、  神からの寵愛を授かりし者選ばれる  四体の神が降り立つ時、  選ばれし者、花嫁とならん」 「双子って俺たちのこと? 寵愛ってどういう意味?」 声に出して読むと、ピンと来ないのかあっけらかんとした声で優希が訊ねる。 「まさか、確かに僕らは双子だけど昔の時代のことじゃない?寵愛っていうのは大切に愛するって意味だったと思うけど……」 「ふーん。最後、花嫁って書いてあるけど誰かと結婚するのかな?」 「うーん……。僕もよくわからないな。神とか書いてあるからただの空想で書いたものじゃないかな?」 「たぶんね」とつけ足せば優希が「なーんだ空想か……」なんて面白くなさそうに呟いた。 「さあ、巻物の中身も見たし帰ろう」   落胆する優希から巻物を取り上げ、箱に戻そうとした時だった―― 『――我らが花嫁、今宵迎えに参る』 低く、どこか懐かしい声が聞こえ後ろを振り向く。けれどそこに人などいない。ただ整然と骨董品が並ばれる棚があるだけだ。 気のせい? けれど確かに聞こえた声は今もはっきりと耳に残っている。 「兄ちゃん?どうしたぼーっとして」 優希が心配そうな顔で覗き込んできて咄嗟に「ううん、なんでもない」と答える。 妙な胸騒ぎを覚えるまま、急ぐように蔵から出た。  

ともだちにシェアしよう!