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第3話

その日の晩、優希に一緒に寝ようと誘われ快く良いよと答える。 いつもなら「一人で寝れないの?」なんて意地悪く聞くけれど、それを言わなかったのは多分、自分も一人で寝るのが心細かったから。 「布団と枕持ってくる!」と嬉しそうに駆けて行く優希を見つめながら、優希の寝る場所を空ける為、布団を移動させる。 「じゃあ、電気消すよー」 布団を二つ隙間なく綺麗に並べて寝る準備は整った。 電気を消す為に立ち上がれば「いいよ」と布団から顔を出し優希が答えるのに合わせて電気をパチンと消す。 「兄ちゃんの布団入っていい?」 布団に潜り暫くすると、優希がおずおずと聞いてくる。 「いいよ。ほら」 布団を捲りおいでと声を掛ければ、もぞもぞと優希が布団の中に入ってくる。 すぐ隣に顔を出し「ふう」と息を吐く優希にどうしたのと声を掛ける。 晩御飯の時からずっとどこか元気がなかった優希を父も母も心配していた。それは僕も感じていて「何かあった?」と小声で訊ねれば「実は……」と震え混じりの声で話し始めた。 「あの、巻物見てから変な声が、聞こえるんだ……」 「変な声?」 優希が言うには、その声は大地が割れるような低く恐ろしい声だという。その声はずっと優希に「何故逃げた」と問いかけてくるらしい。 「お、おれ……怖くて……あの巻物が、呪いの巻物だったら……どうしよう、俺だけじゃなく、兄ちゃんまでっ――」 「――優希!大丈夫、大丈夫だよ。僕は大丈夫だから。明日お父さんたちに頼んでお祓いしてもらおう」 震える優希の体をぎゅっと抱きしめ背中を擦る。「大丈夫、大丈夫」と優しく諭しながら背を撫で続けていれば、強張っていた優希の体から次第に力が抜けていく。 いつの間にかスースーと寝息を立てて眠る優希におやすみと声を掛け、自分も布団を深く被り、目を閉じる。   優希が言っていた”声”。 自分も蔵の中で声を聞いたがあれとはまた違うのだろうか。 やっぱり、止めるべきだったな……。 家が神社だけあって、参拝客から札やお守りなどのお焚き上げを行う時もある。もしかしたら、今日見たあの巻物も何かいわくつきの供養される物だったのかもしれない。 明日は休みだから、朝一番にお祓いしてもらおう。勝手に蔵に入ったことは怒られるかもしれないけれど、ちゃんと謝れば許してくれるよね。 二人でこっぴどく怒られる姿を想像しながら深い眠りへと落ちていく。 『ようやく見つけた、我らの花嫁』 眠りに落ちる時そんな声が聞こえたような気がして――

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