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第11話
"生け贄"
物語などで聞いたことがある。
神様への供物として捧げる物だと、いつかの本で読んだ。
生きた動物を神様に供物として捧げることで村の安寧を願うという。古来より行われていた風習だと昔、父から教えて貰ったこともある。
時にその生け贄は動物だけでなく人がなり得ることもあるというが……。
皆の空気からしてドッキリを仕掛けられている訳ではないことは伝わった。
けれど、今のこの平和な日本で"生け贄"などという言葉が出たことに妙な引っかかりを感じた。
「生贄に選ばれたお前がすることは一つ、俺らの瘴気をその身体で浄化することだ。俺らは何千年とお前を待ったんだ。もう逃さねえよ」
そう言い放つ青髪の男に頬を片手で掴まれる。
その爪は鋭く恐ろしい。
しかし、何を言ってるのか……青髪の男の放つ言葉が理解できない。
瘴気だとか浄化だとか意味がわからない。
それに最後の……何千年と僕を待ったって……それじゃこの人たちは?
何千年と生きてるの?
そんな訳……。
ありえない。
「花嫁を生贄などと……!慎め青藍 」
「そうだよ……光希は、生贄じゃない。僕たちに、愛される為に、来たんだよ」
琥珀と朱火が青髪の男、青藍と呼ばれる男の間に割って入ったことによって頬を掴まれていた手が離れる。
「青藍よ、何をそんなに苛立っておるのだ?」
「…………チッ」
紫翠が訊ねると、青藍は光希を睨むようにして最後に大きな舌打ちをして部屋から出ていった。
その瞬間、膝から崩れるようにして力が抜ける。
「――っ…………すまぬ、怖がらせたな」
すぐ傍にいた琥珀さんが抱きとめてくれたお陰で傷一つない。
張り詰めていた空気が緩んだことで安心したのか、琥珀の腕の中で途端に意識が途絶えた。
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