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 陸は手にしていた缶ビールをベッドサイドに置き、改めて清虎に向き直る。 「俺も嫉妬するよ。舞台の後の送り出しで、清虎とお客さんが握手したり肩を組んで写真撮ったりするのを見て、ずっとモヤモヤしてた。だから、おあいこ」 「俺のは仕事やん。妬く要素なんてどこにも無いやろ」 「仕事だと解ってても、ってことだよ」  コツンと額をくっつけ、至近距離で見つめ合う。清虎の瞳の中に自分が映っていて、まるで吸い込まれてしまったような感覚に陥った。  触れたくて触れたくて、陸は耐えきれずに清虎の上唇を食む。清虎の瞳にギラリと光が差した。  そこからは夢中で互いに何度も角度を変え、貪るようなキスをした。それでもまだまだ足りなくて、陸は隙間を埋めるように清虎にしがみつく。呼吸するのも忘れ、頭がクラクラしてどうにかなりそうだった。  気付くといつの間にかベッドに仰向けに転がっていて、陸の上に清虎がのしかかってくる。  唇を離した清虎は、陸の髪に指を差し入れ、愛おしそうに何度も撫でた。 ――なんて綺麗なんだろう。  あまりにも端麗な清虎に、思わず息を呑む。それでもその双眸は、獲物を狙うように爛々と鋭く輝いていた。清虎はその名の通り、身の内に猛獣を飼っている。  清虎は陸の耳朶にガブリと噛みつき、首筋に舌を這わせ、再び唇を重ねて歯列をなぞった。苦しそうな表情で、陸の頬に触れる。 「陸……シてもええ? 昨日の傷が辛いなら我慢するけど」  切羽詰まった清虎の声からは、ほんの少し理性と色欲の葛藤が伺えた。それでも陸がもし「辛い」と言えば、本当に止めてくれると信じられる。  陸は微笑みながら、清虎の頬を両手で包んだ。 「傷はもう平気だってば。俺を抱いて。清虎と一つになりたい」  清虎は一瞬呼吸を止め、切なそうに眉を下げた。 「陸、あんまり煽らんとってや。俺、加減できひんようになってまう」 「加減なんてしないでよ」  陸は両腕を伸ばし、清虎を自分の方へ引き寄せる。 「……ほな、覚悟しぃや」  耳元で清虎に囁かれ、ゾクッと興奮で体が震えた。

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