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第63話
今になって見ると、よく分かる。なんて歪な家族の集合絵なのだろう。
立っているのは、男女の夫婦だった。男の方は貴族然とした堂々たる立ち姿で、その隣に寄りそうように、痩せ気味の女性が立っている。
そして、二人の前には椅子が置かれ、そこに座っているのは、二人の子ども。
一人は華やかな少女だった。家族が揃ったのが嬉しいのか、朗らかに笑う姿が描かれている。
そして、もう一人の少年は、少女より幾分か年下だ。不安そうな顔でこちらを睨みつけている。
そうだ。あの時は、描かれたくなんてなかった。彼女の隣に立つと、自分が見劣りしてしまうことを、知ったばかりの頃だったから。それでも、彼女は手を繋いでくるから、逃げられなくて、我慢していた。もっと笑ってと言われても、上手く笑顔を作れるはずもなかった。
描かれている少年は、二十年前の――十になったばかりのアンリだ。
いてもたってもいられなくなり、アンリはレオンの荷物を漁る。
どうして名字を聞かなかったのだろう。もしかしたら、レオンという名前だって偽物かもしれない。何か、彼の本当の名前が分かるものを。
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