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第10話 ハル・ロゼニウム・ガーディナー1

「あの、ハルさま……?」 「ん? あ、ああ、手、放してくれないか」 「あっ、すみません……」 「いや……」 (くそ、ララに直接謝ろうとしても、言葉が出てこないってことは、補正がかかってるってことなんだよな……?)  どうにかララの機嫌を取りたいが、どうにもこうにもお手上げだった。下手にゴマをするような発言をしても、今のハルではツンが前面に出て、傷つける言葉を吐いてしまう恐れがある。加えて、ハルの記憶が確かならば、このあとすぐにウィリスの号令で大洗濯大会が催され、そこでララとウィリスは距離を縮めることになっている。 「ハル、頭痛の方はどうなんだ?」  ウィリスが覗き込んでくると、ハルの内部ではふわっとした何かが起こった。少なくともハル自身は、態度のとおりウィリスを疎んじているわけではなさそうだった。 「心配するほどじゃない。まだ痛むことは痛むが」 「ハルさま……。あのっ、このたびは、ぼくの騒ぎに巻き込んでしまって、申し訳ありませんでした……っ」  ぴょこん、とララが勢い良く頭を下げた。こんな可憐なベータを相手にどう立ち回ったらいいのかわからず、思わずハルの口をついて出たのは、ララを攻撃する愚痴だった。 「……まったくだ。あんな中庭で、人が大勢通る中、迷惑この上ない。おかげで酷い目に遭ったじゃないか」 (うう、このツンデレ野郎、扱いづらいったらない……! 別に気にしてないし、大丈夫だからって言いたいだけなのに……っ)  ハルが難儀して百面相をしていると、ウィリスが横から助け船を出した。 「それはララに言ってもしょうがないだろ」 「きみはこの転入生をかばうのか?」 「かばうも何も、リンチに晒されてたら、それを止めるのは風紀委員の仕事だ」

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