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第11話 ハル・ロゼニウム・ガーディナー2

 ララはラインボルン学院高等部の二学年に編入してきたばかりの、唯一のベータだ。唯一という点においてハルとは共通項があるから仲良くできそうだが、ハル本体はベータの編入を快く思っていなかったようだ。唯一無二だったはずの自分の希少価値が、ベータが入ってくることで下がると、危機感を感じているようだった。  ハルが黙り込むと、トーリスがウィリスを補佐するように口を開いた。 「そもそも、何で転入生がベータというだけでリンチの対象なんだ? 意味がわからん。あれをやった奴らは、アルファの名折れだな。みっともない」 「で、でも、転入早々騒ぎを起こしたのは、ぼくの不徳の致すところで……」  ララが膝の上に置いた拳をぎゅ、と握った。良く見ると、黒い制服や白いシャツにまで、泥がこびりついて、汚れている。ハルが自分の格好を確認すると、ジャケットを脱がされ、汚れたシャツのボタンを胸元まで外されていた。どう考えても洗濯が必要な案件である。 「ベータがこう言ってるんだから、謝らせておけばいいじゃないか。庇い立てばかりすると甘え癖がつくぞ」 「ベータじゃない、ララだ。ハル」 「ララはベータなんだろ? 同じじゃないか」  ウィリスがやんわり訂正するのが面白くなくて、ハルは思わず言い募った。ついでに名折れと言われたアルファを焚きつけた記憶までが出てくるのを、煩わしいとばかりに頭を振った。 (おれが陰で主導してやり過ぎたことを謝らなきゃいけないのに……っ、どんどん確信からズレていってるじゃないか) 「あまり急に動くなよ。怪我をしてるんだからな、ハルは」 「もう大丈夫だ。どうせおれは中身が丈夫なだけが取り柄のオメガだからな」  熱を測ろうと伸ばされたウィリスの手を振り払い、ハルは焦った。このままウィリスに先手を打たれ、大洗濯大会に雪崩れ込まないように、どうにか話題を変えねばならない。

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