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第21話 強制イベント発動3

「あの、ハルさま……?」 「?」 「まだ頭が痛いのではないですか? ぼくでは頼りにならないかもしれませんが、我慢するといけません。ベッドをお譲りしましょうか?」  主人公に相応しい可憐な気遣いを見せるララに、ハルは思わずぐらりといきかける。 「いや、おれなら平気だ。言ったろ? 丈夫なだけが取り柄のオメガだと」 「はい……。でも……」  正直、ハルはララに対して、それほど悪感情が持てなくなっていた。ベータが攻略対象になるというのも変な話だが、それ以前にララの見せる気遣いや心根の優しさに触れ、主人公然としたその在り方に、こんな人間がいるのか、と驚きの連続だった。  二人の間に気まずい沈黙が流れる。  そんな時だった。ピコン、と音がして、ダイアログが開いたのは。 【神の試練1:ララにキスをする】  またいつものやつか……、と思わず「しない」を選びかけて、そのダイアログが金の縁取りのある特別なものであることに気づく。 (選択肢がない……?)  慌ててダイアログの周囲を指で触ってみるが、どこにも消すボタンが存在しないことに気がつく。 (何だこれ? 消えないぞ……! キスって……いきなりこの状況でしたら、嫌がらせ以外の何者でもないだろ……!)  どうにか消そうと試みるあまり、ダイアログの周囲を色々押しているうちに、また別のダイアログが重ねて表示された。 【ポーズ(1/3)を使いますか?:はい・いいえ】  ハルは、ゲームの開発担当者を呪いながら、苦し紛れに「はい」を選択した。

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