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第58話 恋情1
終わってみると、空虚だったりした。
あれから三度、交わった。
一度で終われなかったのは、どちらのせいでもなかったと思う。シーツを被ってうつらうつらするハルのベッドサイドで、身繕いを済ませたウィリスの気配がした。わずかに身じろぎすると、ウィリスがハルを振り返った。うなじが無事だったことに心底、安堵しながら、どこか物悲しい沈黙に身を委ねていたハルに、金色の視線を寄越す。
激しい交わりのあとだから、噛まれていても文句は言えないところだった。
が、ウィリスはそこまでしなかった。ラット状態に近かったはずなのに、よくわきまえられた行動だったことに、感謝するとともに、ウィリスの経験値を見たハルは、少し嫉妬した。彼の腕に最初に抱かれたのは誰だったのだろうかと、余計な推測までしそうになる。
「……ハル」
元どおりに制服を着たウィリスが声をかけると、ハルはぎゅ、と身をすくませた。
ウィリスと寝て、ハルは自分の気持ちが変わっていることに気づいた。最初は、この既成事実を元に、ウィリスを脅すことも一瞬、考えた。
しかし、たとえこれがハルにとって初めての経験であっても、ウィリスを籠絡することはおろか、どんな約束も介在しないことをわきまえねばならない、と考えるようになっていた。
寂しさも孤独も、ずっと抱えてきたものだ。
今さら抱えきれないなどと我が儘を言う気はなかった。
「大丈夫か?」
ウィリスの指が、シーツから少しだけはみ出ているハルの金髪を一房、梳く。心地よい気怠さに溺れられれば、どんなに楽だろうか、とハルは自問した。
「次の約束をしても……?」
ウィリスの声は甘いものだった。二度目、三度目と回を重ねるうちに、愛撫はハルを蹂躙するものから蕩けさせるものに変わり、キスも挿入も互いにいいところを探り合うそれに変わっていった。
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