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第179話 エンディング・エピローグ4
二年前の今頃は、ハルもロイエンバーム兄弟も、希望に胸を躍らせ、始業式に出た。一年前はララがその列に加わり、様々なことがあったが、今、ハルたちはかけがえのない絆を得ている。
「トーリス、ぼくたちはローヴ先生を迎えにいってくるよ」
ララが言うと、トーリスは真剣な表情で頷いた。その銀色の眸が、ララを捉える時だけ煌めくのがわかる。
「ああ。くれぐれも注意してくれ。ハルも頼んだぞ」
「まかせてくれ。行こうか、ララ」
「はいっ」
ハルは視線でウィリスに挨拶して、ララと肩を並べて踵を返した。ゲームがエンディングを迎えた今、もうダイアログが出てくることはなくなってしまったが、それを寂しいと感じる時も過ぎ去り、今は生きている実感がする。
ウィリスとトーリスに送り出され、ハルは自分のうなじにちょっと触れた。
そこは少しざらついていて、切り揃えられた金髪の内側に、ウィリスに噛んでもらったつがいの証の、小さく赤い噛み跡が付いている。それをウィリスに触れられながら、毎夜、愛を囁かれている。
ハルは愛というものの偉大さを、身を以って学んでいる最中だ。
季節は一巡して、秋──。
短かった夏を追い越すようにして、ひとつの物語が終焉し、人生がはじまろうとしていた。
=終=
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