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第178話 エンディング・エピローグ3
くすくすと笑うララに、ハルは動揺を隠せなくなる。ララは、ハルの思考を読むことにかけては、ウィリスの次に長けているのだ。ハルへの恋情をすっかり昇華したララは今、ますますオメガとしての魅力を放っている。そんなララを守るのも、ハルの仕事のひとつだと自覚していた。
「こ、公私混同はしない主義なんだ……!」
照れながら口を尖らせて横を向くと、ひとしきり笑ったララが、ぽつりと漏らした。
「それにしても、モーリジィ先輩とパリス先生の影響が、これほどまで濃く残っているとは……、ぼくもオメガになって、初めてあなたと同じ脅威を感じるようになりました」
大変でしたね、としみじみララに言われると、自尊心が疼くのは、高慢だったハル・ロゼニウム・ガーディナーの名残りだろうか。
「大丈夫だ、ララ。あの二人は少なくとも、もうこの国では貴族としては生きられないだろう。海を渡れば、また別だろうけれど。派閥だった奴らも、彼らの顛末を目にすれば、きっと意見が変わるはずさ」
「ハル……」
「第二の彼らを出さないためにも、父にしっかり報告したからな。使えるものは、何でも利用すると決めたんだ。おれたちがしっかり道を均していけば、後ろに続くオメガたちが楽になるだろうし」
「そうですね。その日を待ち遠しく思います」
課題は山積だが、少しずついい方向に向かっていることは事実だ。ハルはララという親友を得て、ウィリスというつがいを得て、今までにないほど心が軽やかだった。
「ウィリス、一年の誘導、終わったぞ。迷子が二名ほど出たが、概ね平和だった」
風紀副委員長のトーリスが、紫紺に金の縁取りのある腕章をして、やれやれという様子でウィリスの元にきた。
「毎年、地図を読めない一年がいるのが不思議で仕方ないんだが、これも年中行事か……」
ため息をついたトーリスに、ウィリスは苦笑する。
「しばらくの間は、迷子が出るのはやむをえないだろうな。各所の見回りを増員して、積極的に声をかけてもらうのが、いいだろう」
「同感だ。ま、年中行事も一ヶ月ほどすればさすがに落ち着くだろう」
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