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三人暮らし

「キース様、今日はどうします?」 「ああ、今日はワグのベッドを作りましょうか」 「修行はいいんすか?」 「これも修行ですよ。君、初日に布団一式オーガに取られたから眠るの大変でしょう?」  ワグが苦々しく魔王を睨む。  ワグが持ち込んだ荷物は有効に使って欲しいとのことだったが、魔王がいち早くワグの布団を奪ったので、ワグはそれまで魔王が使っていた寝袋布団を土の上に敷いて眠っている。 「なんで俺の布団をそいつが……」 「すみません、オーガは寝具と食器にうるさくて」 「そんな魔族っているんすか? あんな野蛮なんだから土で寝ればいいんだ」  魔王はワグの言葉に耳を貸さず、昨日取ってきた渡り鳥の卵を焼いている。香ばしい香りにワグがひくりと眉を吊り上げた。 「魔族はなんでも生で食うんだと思ってたのに」 「オーガが細かすぎるんです、きっと」 「キースは無頓着すぎる」  魔王の言葉にワグは何か言い返そうとしたが、言葉を飲んだのはそこにだけは同調するという意識の表れだろう。食生活においてはワグにまで初日から無頓着すぎると驚かれた。そのせいで、今はキースの食事はワグが準備するようになったのだ。 「そんなに酷くないと思いますけど」 「いや、キース様は酷いです」 「ワグ……君までそんな」 「だってキース様、ほっといたら芋だって生で食うでしょ!」 「そこまではさすがに」 「生で食っていたな、そういえば」  魔王まで会話に加わって、なんだかキースが責められている。賑やかだなあと頬が緩むと、笑いごとじゃないですとワグに叱られた。 「キース様はオレのすっげえ尊敬する人なんだから、生の芋食うとか知りたくなかった……」 「なんか、すみません」 「あと、それ。その丁寧語でオレなんかに喋るのも、駄目です。そこの魔族にも丁寧語だし、意味わかんねえ」 「あー、これは昔からの癖なので直らないんですよ。気にしないでくださいね」 「気になりますって」 「それから、オレなんか、っていう言い方は感心しませんよ。君は大事な存在なので」 「キース様っ、ありがとうございます!」

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