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三人暮らし
魔王と二人でいた時は、最低限の会話しかなかった。それでなんら不自由はなかったのだが、ワグ一人加わったことでこんなに賑やかだと、やっぱり楽しい。自覚はなかったが、全くの一人でいた時、自分はマリーがいうように孤独に苛まれていたのかもしれない。
朝食を終えて洞窟を出ると、珍しく魔王もついてくる。普段は寝ているかどこかへいくのだが。
「どうしました?」
「それの寝床を作るんだろう」
「ああ、木を切ってくれるんですか、ありがとうございます」
キースは相変わらず斧を使うのが苦手で、すぐに疲れてしまうので、木を使う時はいつも魔王にお願いしていたのだが、今回もやってくれるらしい。ワグのことなのでやってくれないかと思っていただけに、嬉しい。
ワグが目を大きく見開いて、魔王を見ている。魔族との生活など、驚くことしかないのだろう。
「木を切るまでで大丈夫です。ワグは大工なので、木材があればきっとベッドは作れると思うので」
「大工? それがか」
「そうですよ。ワグ、できそうですか?」
「え? あ、はい。道具持ってきてるんで、他になんか欲しいものあったら作りますよ」
それは助かるなと頷いた時だった。魔王がおもむろにワグの襟首を掴んで引き寄せる。慌ててその間に入るが魔王はワグを放さない。
「オーガ、止めてください」
「こ、殺される!」
ワグが半泣きの声をあげた。それに構わず魔王がずいと顔を寄せる。
「棚は作れるか」
「殺される、やっぱり魔族は魔族だ、くっそ、……は? 棚?」
顔を覆っていた腕をどけてワグがまじまじと魔王を見つめた。
「硝子を入れておく棚がいる」
「食器棚? あんたが? 魔族が、食器棚……」
「オーガ、ワグに無理を言ってはいけません」
「木の実を割った器で満足している貴様は必要ないだろうが、俺は要る」
「食器棚、魔族が。――木の実割った器?」
なんだか、嫌な予感がする。この会話は早めに終わらせようとキースは魔王をワグから引き剥がす。
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