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第1話

「ねぇ、和くん。どうしたのそんなに落ち込んじゃって~」 二丁目のバー、momoのカウンターで項垂れているセフレの和樹を宥める。 「うーん。涼くん。俺、振られたんだー。ずっとずーっと、好きで居てくれるって言ってたのに女作ってどっか行っちゃった~。」 そう言いながら、ウイスキーのロックを飲み干す。この世界ではよくある話だろう。バイの男が将来や社会的な事を考えて優先した結果、女を選ぶことは。選択肢のあるバイは俺たちにとっては生半可な気持ちで近付いて来られると困る。 そんな思いを持ちつつ俺は和樹に笑顔を向ける。 「あーあ。可哀想に和樹。俺が慰めてやろうか?」 「うーん。流石に振られた次の日に誰かとヤる程のメンタルは持ち合わせてないよ~」 と言いつつ俺に頭を撫でられている和樹は相当落ち込んでいるようだった。 誰かを好きになって最後に振られるくらいなら、最初から誰も好きにならない。それが1番楽で苦しくない。そんな考えが頭をよぎる。 「そっか~。ざーんねん。じゃあ、可哀想な和樹には俺が奢ってやろう…!」 「わー本当に…!ありがとう。」 ◇◆◇◆◇ 俺は、暁 涼太(あかつき りょうた)。ゲイ。タチ。セフレは結構いる。恋人は居ない。ガムがこの世で1番好き。 そして、エンジニアの仕事をしている27歳。性格は企画リーダーとか任されるけど、断るタイプの人かな。 「はぁ……。」 そして隣で落ち込んでいるコイツは会社の後輩。突然、食事に誘われたかと思えばこんな調子でずっと落ち込んでいる。 「はぁ…。」 「何だ!?どうしたー?」 俺は煮え切らない後輩にしびれを切らして、何があったのか聞いてみた。というか、そういう雰囲気を醸し出されているのに無視をするのが忍びない。 「先輩!!聞いてくださいよ彼女がぁ!」 後輩曰く、彼女が浮気してヤった相手の子を妊娠しちゃったらしい。 はぁ、本当に女って面倒臭いな……。ちょと中に出しゃすぐに子供が出来る。それに比べ、男は楽で良い。 そんな口には絶対に出せない愚痴が頭を支配する。 「あー。まぁ。子供が自分の血を引いていようがいまいが、授かりものだろ?彼女ごと愛してやれよ。」 「先輩…っ!」 少しカッコつけ過ぎた俺の言葉に、後輩は感極まって俺に抱き着いてきた。 「って、何でそこで泣くかな?」 まぁ、見ての通り。こんな感じで俺って結構適当に生きてるタイプの人間だと思ってる。 仕事が終わればmomoに向かい、セフレと会えば適当にヤって帰る。そんな日常。 「ん?」 昼休憩も終わり、スマホを見ていたらメールがきた。噂をすればそのセフレからだ。相手は昨日の和樹とは違ってセックスするより、酒を呑みに行く事の方が多い臣からだった。 【涼太。今日会える?ついでに明日休み?】 「ふん。コレは珍しくヤル気満々だねぇ。」 【いいよ。明日も休み。】 そう返信する。すると既読がすぐについてスタンプが帰ってきた。 「何してるんですか?」 「うおぁ!!」 不意に後ろから声を掛けられた拍子に俺はスマホを落としてしまった。コイツは後輩の小林 隆弘、俺にはクールなフリして生意気な奴。 「恋人ですか?会社でやり取りなんて随分暇ですね。」 「うわ~。相変わらず冷たいね。何~?そんなに気になる?」 「いえ。別に。」 「まぁまぁ。そんな事言わずにさ~」 「結構です。」 少しダル絡みに持ち込もうとすると逃げられてしまった。 スマホを覗き見るほど俺が気になるのか。俺って以外とノンケにも需要あったりする? ははー。そんなわけないか。そんな事はさておき今日は一応誘われた訳だし、さっさと仕事を終わらせて1回家に帰ろう。そんでシャワー浴びる時間作って……。 そんな事を頭の片隅におき、俺は急いで手元にある資料を作り始めた。 ◇◆◇◆◇ 「あん…っ!あっ…待って…!涼太っ!」 「んー?何?良くない…?……っと!」 momoで待ち合わせて、早々に臣とはヤっている。コイツも失恋したらしく、俺に慰められにきたらしい。 最近、どいつもこいつも振られただの子供が出来ただの、傷付くのがわかっているくせに。まあ。俺には関係ないけどね。俺は気持ち良い事が好きなだけだし、今はタチやってるけど俺ってタチ受けする顔してるらしいし、よくネコと間違えられて声を掛けられたりする。 「はっ…ん"!ま、待って…出ちゃ…う。からっ…!」 「ははっ。いーよ。何回目だっけ?俺に教えて…?」 俺は口角が意地悪く上がっているのが自分でもわかる程に今、悪い顔をしているのだろう。臣もそれを見てさらに興奮したのか締め付けが強くなった。 「さん…っ! あっ…ん…さんかぃ…!3回目っ!ダメっ…出るっ…!」 「っ!くっ……!はぁ」 たまに、自分がネコ側だったのを思い出す。今考えると、こっちの方が向いていたんだなと感じる。 こんな風に可愛いセフレを虐める事の方が好きだったりするからかな。 「相変わらず意地悪だね涼太は。」 気だるげな色気を漂わせながら臣が俺の腕枕に頭を預けてきた。 「そうかな?臣が煽ったんでしょ?」 「よく言うよ。」 臣は呆れた顔をしながら俺と目線を合わせた。 「まあまあ。ほらおいで甘やかして欲しいんでしょー?」 「はぁ。お前に惚れる男達の事がよく分かるよ。」 「なになに?惚れちゃった…?」 「俺にはセフレで充分。」 「そりゃ、残念。」 臣は俺に腕枕されながら、そのまま眠りについた。 セフレで充分か…。 よく言われるし、自分でもそう思ってる。

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