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第2話

どうしても触れられたくない話題って誰にでもあると思ってる。 それは大小それぞれで、でも自分からするとその触れられたくない話題ってのが1番心の中で大きかったりする。 「ふわぁ。」 「なんですか…真昼間から気が抜けるような伸びとかしないでくださいよ。」 外回りの仕事の息抜きに後輩の小林君とカフェに来ている。まぁ、ずっと商談で気を詰めてたんだから、あくびくらい許して欲しい。 「あはは。相変わらず厳しいね。」 「貴方が緩いだけですよ。」 そうコーヒーを口元に近づけながら、鋭い目付きで小林は言った。 「ははーよく言われる。」 そんな相変わらずクールな後輩を隣に俺は手元にあったガムを口に放り込んだ。昔からガムが好きで口寂しくなるとガムを噛んでしまう。 味が無くなっても何故か出すのを躊躇ってしまう。 「…貴方っていつもガム噛んでますけど飽きないんですか?」 「ん?」 俺の顔をまじまじと覗き込んで突然そんな事を聞かれた。 「なにー?そんなに俺の事気になるの?」 おちょくるように返せば、ムッとしたように「はぁ?」と言われた。ちょっとおもしろいな。 「いや、単純に口寂しくなると噛んでしまうんだよね。俺はタバコとか吸わないし、飴も舌が痛くなったりするしね。」 真面目に返してやれば、小林君は納得したようだった。 「思ってたよりもずっと考え方は健康なんですね。」 「そうそう。20代後半にもなってくると…って小林クン酷くない?」 「そうですかね。」 そんないつもの様なやり取りをして俺たちは会社へ戻った。 社内に戻ると、社内は空気が悪くその元凶に合点があった。それは俺によく嫌味を言ってくる課長が新人の女性社員にしつこく絡んでいたのだ。 おー。いやーな雰囲気が漂ってるねー。 絡まれている女性社員は優しい雰囲気で世間の男がモロに好きそうな外見をしている。名前は佐藤さん。 佐藤さんにハゲ課長が何か言っているようだが、ここまでは聞こえてこない。 いつも佐藤さんと一緒にいるもう一人の女性社員も彼女を見て気の毒そうな顔をしている。 はぁーやだやだ。こんな雰囲気の会社は。 「暁戻りましたー」 俺はそんな悪い雰囲気をぶった斬るように大声で帰ってきた事を伝えた。 一瞬で、周りの視線が俺に向きみんな俺に何とかしてくれという目で見つめてきた。そんなに見られても何も出ません。なんて思いつつ、俺は笑顔を顔に貼り付けてハゲ課長の所へ向かった。 「課長…!頼まれていた重要資料が出来ました。」 課長の背後から話し掛けると、その向こうにいた佐藤さんが俺をみてやっと解放されたというような表情を浮かべていた。 「あぁ?なんだね、暁くん。君か…まったく。コッチは佐藤と大事な話をしていたんだがね。」 いかにも不快な顔をした課長はチクリチクリと小さな嫌味を重ねてきた。 「ははは。それは、すみませんでした。でもこの資料今日の午後までに上に提出しなくちゃダメなんですよね?」 「…そうだ!どうして早く出さないのかね!?君は全く。企画内容は良くても社会人としてのルールがなっていないじゃないか…!」 前々から頼まれていた比較的に重要な資料を受け取りまた嫌味を吐いてきた。全くもって、社会人としてのルールが守れていないのはお前だ。 そんな悪態を付きつつあとは佐藤さんを救出するだけだ。 「あはは。すみませんでした。以後気をつけますねー。あ、佐藤さんちょっと俺の仕事の事で相談があるんですけど、いいですか?」 強く頷いた彼女は俺の後に着いてきた。 任務完了とばかりに俺は彼女を給湯室まで連れていく。 「ありがとうございました…!」 給湯室まで行くと佐藤さんは頭を下げながらお礼を言ってくれた。 「いやいや、どういたしまして。少し面倒臭いよね、あの人。また何かあったら言ってね。」 「はい。すみません。」 「じゃ、俺はもどるね。」 そう言って彼女を残して自分のデスクに戻ると隣のデスクにいる小林くんから、話しかけられた。 「先輩ってその内、社内の男性方に殺されそうですね。」 「は?なんでよ。」 突然そんな事を言われて素の反応を出してしまった。 「社内の女性社員全員からそういう目で見られてるじゃないですか。」 「なにー?俺ってモテモテ?そうかーやっと来たかモテ期~。」 自分を抱きしめながら、くねくねと変な動きをする俺を冷たい目で見ながら小林くんは言葉を続けた。 「まぁ。ナルシストと誰にでも訳隔てない感じがギャップなんでしょうね。女性には。」 「ナルシストじゃないって、俺は自分が大事なだけなの~。」 「あーはいはい。」 今日も後輩は俺に冷たいです。クールすぎて凍りそうだ。 でも、実際は俺は俺が1番嫌いで、俺が1番可愛い。自分よりも守りたいなんて思う人なんて誰もいない。俺は結構薄情かもな。 けど、素の自分なんて幾らでも隠す事ができる。自分を傷付けない為にはそが1番の得策だろう。 「さぁ!今日は残業せずに帰れるかな…?」 「無理ですね。この資料量じゃ残業決定です。」 小林くん。それは黙ってて。

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