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エピローグ11
「おまえが、俺の事好きになってくれてよかった」
自分はきっと、人並外れて淋しがりなのだ。
その証拠に、常に誰かが傍にいないと淋しくて、たとえ恋愛感情がなくても「来るものは拒まず」だった。
でも今は、小次郎さえ傍にいてくれたら、温かくて幸せで優しい気持ちになれて、他に何もいらないとさえ思える。
こんな気持ちになれるなんて、ほとんど奇跡に近い。
本来は大人になってから気付く感情ではないだろうか。
「那津さん、僕の方こそ……こんな僕を好きになってくれた那津さんに、本当に、本当に……感謝の気持ちしかないんですが、上手く伝えきれなくて……」
「こんな僕、とか言うなよ」
「はい……ごめんなさい」
二人の甘い会話に聞き耳を立てているのは、植物と通り過ぎる風たち。
「じゃあ一生かけて、俺に感謝の気持ちを伝え続けてくれよ」
「那津さん……」
「俺も、ずっとお前の傍で聞いてるからさ」
小次郎の端正な顔が、くしゃっと歪《ゆが》む。
あ、また泣くのかなと思ったら、それは思い切り破顔した。
「はい!」
元気な返事の後、小次郎の顔はやわらかく微笑み、近づいてくる。
那津は、胸の中が幸福感で満たされるのを感じながら、恋人の優しいキスを受け入れるために、そっと目を閉じた。
了
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