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第12話
マタニティブルー
あれから5ヶ月。
眞仁との子供を妊娠した俺はついこの前まで悪阻に苦しめられた。食べ物の匂いすら受け付けず嘔吐を繰り返す俺に眞仁はずっと付き添い、支えてくれていた。何日か仕事を休んでくれたりもして。
「迷惑かけてごめん。」
あまりの体調の悪さに色々不安になった俺が泣きつく度に眞仁は
「迷惑だなんて思ってない。俺の子を産んでくれるんだろ?これくらい尽くして当然だ。」
と、俺が落ち着くまで抱きしめ背中を摩ってくれる。ほんとに出来た旦那さんだ。
それもようやく落ち着いてきて、この前で病院で「安定期に入った」と言われた。これでもう眞仁に迷惑をかけずに済むと安堵した矢先、また不安に押しつぶされそうな毎日が始まりを告げた。
「最近帰ってくるの遅くないか?」
ベンチャー企業の若社長である眞仁は終業時間に多少融通が効くらしく俺が身篭ってからはいつも6時には帰宅して晩御飯を作ってくれていた。
が、ここ最近帰宅時間が7時、8時、と遅くなってゆき今日なんかもう10時を過ぎている。俺が安定期に入ったのを見計らった様に遅くなっていく眞仁の帰宅時間に俺の不安は募る一方だった。
その不安が爆発したのはそれから1週間後のこと。尾行みたいな真似はしたくなかったけど致し方ない。眞仁の終業予定時間の5時、俺は眞仁の会社のビルの前にいた。
「何もないならいいんだ。何もないならな。けど…。」
今更眞仁が俺を捨てるとは思わないけど、アイツには前科がある。
「あ!」
そんなことを考えながら出入口を見張っていると、5時を回った頃眞仁が出てきた。さぁ尾行開始だ!
最初から眞仁の行動はおかしかった。
「家と反対方向に行った…なんで?」
あらぬ方向に転がる思考を必死に食い止める。それでも脳裏に点滅する〝浮気〟の文字を消すことはできなかった。
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