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第17話
後日談
それから1週間。全快した俺を眞仁があのホテルに連れていった。
「ここ…あ、あの時のホテル。でも、なんで?」
「陽茜を紹介したい人達がいるんだ。」
2回にあるレストランで待ち合わせらしく、俺はそこに連れていかれた。
「おー来た来た。」
そこそこ賑わう平日の夕ご飯時。俺達が入ってきたことに気づいたのか、1人の男性がテーブルから手を振ってこちらに合図してきた。俺達がそこに近づいていくとその男は眞仁に親しげに話しかけた。
「よぉ眞仁、この間振りwwんで、そっちが?」
「そうだ。紹介したいんだが全員揃っているのか?」
「シェフがまだだな。今嫁が呼びに行った、あ、ほら来たぞ。」
「ああ本当だ。」
俺達をいれて6人。皆眞仁と同じくらいの年齢に見える。
「陽茜、紹介しよう。まずこっちが新藤薫 、幼稚園からの幼馴染みだ。」
そう紹介されたのは最初に俺達を出迎えてくれた男性。黒い髪を短く整えスポーツマンな感じがするかっこいい人。
「その彼女の間宮凛子 、高校の時のクラスメイトだ。」
凛子さんは凄い美人で、できる女性であることがビシビシ伝わってきた。
「その隣が和泉 …おっと今は如月 だったな。如月彩人 、この前話した通り駅で待ち合わせてたのはコイツ。コイツも幼稚園からの幼馴染で俺の唯一のΩの知り合いだ。」
この綺麗な人もΩなんだ。美人なんだけどどこか儚い感じがする。守ってあげなきゃと思わせる雰囲気がある。
「んで、その隣がαで彩人の旦那如月政宗 、ここでシェフやってる。」
「…だからこの前もこのホテルに…」
「…そうだ。」
「おい、ちょっとまて眞仁。お前とあやが待ち合わせってどういう事だ。」
「お前は本当に彩人の事になると馬鹿だな。1週間前に集まったとき俺が彩人を駅まで迎えにいくって話になってただろ。」
「その馬鹿はほっといていいから早くその子紹介しなさいよ。」
「ああ悪い。一条陽茜 、俺の番で愛する奥さん。今妊娠5ヶ月だ。」
「ちょっと!/////。」
「ん?本当の事だろ?」
「/////…。一条陽茜です。あの、よろしくお願いします。」
シレッと凄いことを言った眞仁に赤面させられながら必死に言葉を紡いだ。
「ちょっと眞仁、あんたこんな可愛い子放っておいて私たちと飲んだりしてたの?」
「ああ….それは。」
「最低ね。陽茜君?この馬鹿なんか捨てちゃって新しい彼探したら?」
凛子さんが思いがけないことを言う。
「散々泣かされて、今回もこれの不甲斐ないせいで倒れんでしょ?もうそろそろ愛想尽きても誰も文句言わないわ。」
凛子さん、凄い強烈なキャラだ…。でも、俺は。
「おい、凛子。余計なこと…」
「確かにそうかもしれません。でも、俺は眞仁が好きです。眞仁以外考えられない。お腹にいるこの子にお父さんだと紹介するなら眞仁がいいんです。」
俺の言葉に眞仁まで驚いていた顔をした。珍しいな、ちょっと可愛いかも。
「これからもたくさん不安にもなるし辞めたくもなるかもしれません。でも、それを眞仁と一緒に乗り越えていきたいです。理想の夫婦像ってそんな夫婦じゃないですか?」
場が水を打ったように静かになった。あれ、俺変な事言ったかな?そんな風に不安になっていると薫さんが拍手し始めた。それは段々と周りに伝染していきレストラン全体を包んだ。
「!?」
「眞仁には勿体ないくらい出来た子だな。」
「本当にびっくりするくらい強いわね。」
薫さんと凛子さんにそんな言葉を貰って、彩人さんには頭を撫でられた。そして、
「…ありがとう、陽茜。そんな風に思ってくれて。本当に、ありがとう。」
眞仁にきつくきつく抱きしめられた。
「俺そんな凄いこと言った?」
「君は人に関心がなかった眞仁の心を溶かしただけじゃなく、散々君のことを雑に扱った眞仁にまだ寄り添おうとしてくれている。それは並大抵の事じゃないんだよ。」
だから、と1度言葉切った政宗さんは俺の方に体を向けて頭を下げた。
「これからもどうか眞仁をよろしく頼む。」
いきなり頭を下げられ慌てたけど言われた言葉は俺達のことを認めて貰えたようでとても嬉しかった。
眞仁は照れくさそうにそっぽを向いていたけれどテーブルの下で繋がれた手の力が一瞬強くなって嬉しいことが伝わってくる。
それを感じて俺は笑顔で政宗さんに答えた。
「もちろんです!」
その後は政宗さんの料理を食べながら眞仁のことを色々聞いた。ほんとに色々と。普段は見せてくれない眞仁のかっこ悪い面も凛子さんがサラッと暴露していた。
楽しい時間はあっという間で、お開きの時間に。最後に薫さん、凛子さん、彩人さん、政宗さんから「また、眞仁が何かやらかしたら遠慮なく自分達を頼ってほしい。」と言われた。責任をもって眞仁を叱ってくれるらしい。
皆と別れた帰り道、眞仁と手を繋いでのんびりと歩く。
「ヤケに静かだな、どうした?疲れたか?」
「んーん。家族には恵まれなかっけどその替りに眞仁や政宗さん達に会えたならいいかなぁって。」
「家族に恵まれなかったは心外だな。これから家族を作っていくんだろ?俺とお腹の子と一緒に。」
その言葉を聞いて嬉しさに涙が零れた。
「うん、うん…一緒に作っていこう…。」
たくさんの困難を乗り越えて、俺達は家族になっていく。
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