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第24話
『こんにちは!』
眞仁 side
陽茜 が臨月に入った。安定期に入ってしまってからは落ち着いていて家事もこなし夜は甘い情事に耽ることも多々。
そんな毎日だったからか少し油断していたのは否定出来ない。またも俺の肝を冷やすような電話がかかってきたのは臨月に入って2週間半がたった頃だった。
仕事中急にかかってきた電話、相手は陽茜。普段は絶対仕事中になんて掛けてこないから何かあったのかと慌てて電話にでる。
「陽茜か、どうした?」
『まひと?…』
言葉のたどたどしさに違和感を覚える。
「どうし…」
『まひと、どぉしよう…分かんない…』
「何があったのかゆっくり説明してごらん。ゆっくりでいい、落ち着いて。」
しばらく電話口から深呼吸をする音が聞こえた。
『あのね…』
ようやく落ち着いたのか陽茜が切り出す。
『台所でね洗い物してたんだけど、急にお尻から、潮吹きのときみたいなのが漏れてきて。で今ものすごくお腹が痛い。』
たどたどしく言う陽茜の言葉をまとめるとこんな感じだ。実際は間が空いていたり、嗚咽が入ったりしている。
周りに聞いていた話から恐らく破水と初期の陣痛であることを察するがそれを陽茜いうと余計慌てるだろう。ここは
「そうか分かった。しかし不幸にも俺はすぐ傍に行ってやることが出来ない。事情を話して 彩人 に向かわせるから俺が行くまで彩人と待っていてくれ。」
『わかった、なるべく早く帰ってきてね?』
「ああもちろんだ。」
陽茜との電話を終えるととって返すように彩人に電話をかける。
「もしもし俺だ。陽茜が破水したらしい。陣痛を来ている。俺はすぐ行けないからお前に頼みたい。病院等の判断はお前に任せるよ、印鑑とか必要なら…。」
なるべく端的に、わかりやすく事情を説明する。
「よろしく頼む。」
そう言って電話を終えると少しだけ精神的余裕ができた。彩人に任せておけば大丈夫、そう確信出来るからだろう。
彩人は分かっているらしく急いで向かうと言ってくれた。元々今日は陽茜をランチに誘うつもりだったらしくもう家を出るところだったらしい。
「これで大丈夫、俺のすることはさっさと面倒な会議を済ませて早く陽茜の傍に行ってやることだ。」
出来ればお産に立ち会いたい。テレビで見た必死にいきむ妻の傍らに立ち手を握って励ます夫の姿に少なからずの憧れはある。1番大変な時に傍にいてやれる夫でありたい。その為にも
「小鳥遊 、会議の予定を繰り上げられないか調節してくれ。」
「いきなりどうしたんですか?」
「妻か産気づいた。お産に立ち会ってやりたいんだ。」
「!!、わかりました。なるべく早くできるように各部の部長に打診しますのでお待ちください。」
「頼んだ。」
待っていろ陽茜、すぐ傍に行ってやるから。
眞仁side終
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