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第29話
『嵐の夜に』
陽仁 が産まれて早半年。最近俺のことを「あね」、眞仁 のことを「まぁと」と呼び始めた陽仁と相変わらずのスパダリっぷりを発揮する眞仁と3人幸せに日々を過ごしていた。
そんな毎日に嵐の前兆が聞こえ始めたのは突然の事だった。
ここ最近眞仁の様子がおかしい。別に浮気とかを疑う理由ではないが変なのだ。例えば、家にいる時眞仁の仕事用のスマホが鳴ることはほとんどない。しかしここ最近3日に1回は必ず着信を告げるのだ。
最初の1回は訝しげに出ていた眞仁だけど2回目からは苛立たしげに、酷い時は舌打ちしながらスマホ片手に席を外す。この前は電話口に怒鳴る声も聞こえた。普段家の中では始終穏やかで激情を覗かせるのは俺とのえ、えっちの時だけだ/////。その眞仁が俺達とは違う部屋でとはいえ怒鳴り声をあげたのだ。ただ事ではない。
今も血相変えて苛立たしげ部屋を出ていった眞仁に陽仁とも赤ん坊ながら不審感を覚えたのか覚束無い言葉で「まぁと?」と呼び止めようとしていた。
「お前もパパが遊んでくれなくて寂しいよな?」
「んんーうきゃぁ!」
「…。ごめんな分からない。」
「??」
赤ん坊との意思疎通はなかなかに難しい。因みに何故陽仁はパパママ呼びしないかと言うと俺達が陽仁に接するときにパパとママと言うより普段「陽茜 」「眞仁」と呼び合う方を覚えたらしくいつの間にか俺の事を「あね」(きが言えない)眞仁の事を「まぁと」(ひが言えない)と呼び分けていた。い行は難しいのか?
今日は日曜日でせっかく1日眞仁がいて遊んでもらえると思っていた陽仁は部屋を出ていってしまった眞仁にご不満らしく小さな口を尖らせて
「まぁとブブー。」
などと可愛いことを言っている。俺も買い物に付き合ってもらうつもりだったから少し不満だ。
「可愛い奥さんと子供がいるのに酷いパパだねぇ?」
とか言いつつ眞仁を待っていれば漸く終わったらしく眞仁が部屋に戻ってきた。
「終わった?」
「ああ。家で悪いな。」
「平気。それより今日どうしようか…。」
その時はまだ俺は勘違いしていたんだ。仕事で何かあったのかと。それが嵐の前兆だとは知らずに。
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