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第30話
ここ最近俺達の周りでちょくちょく変なことが起きる。事の始まりは定かではないけど2週間ほど前、いきなりかかり始めた無言電話。それだけでもだいぶ気持ち悪いが、更に不可解な事が起こったのは1週間がたった日の事だった。
いつものようにポストを覗きに行った時の事。
「???」
覗いたポストの中にはビラや宣伝チラシ、ハガキが何枚か。そして
「白い封筒?」
宛名は『一条陽茜 様』つまり俺だ。切手も貼っていなければ差出人の名前、住所等もない。書いてあるのは俺の名前とここの住所のみ。
「切手がないってことは直投函だよな?差出人が書いてないって変だな…。」
ここで考えていてもしょうがないのでとりあえず部屋に戻る。
「ただいまぁ。」
「あね、あね。」
ベビーベッドでいい子にしていてくれた陽仁 を抱き上げると、まるでどこ行っていたんだというように頬をペチペチと叩いてくる。
「ごめんごめん、下にポストを見に行ってたんだよ…って言っても分からないか。」
案の定陽仁は不思議そうな顔をしている。ベッドから降ろした陽仁をフローリングにひいたカーペットの上に下ろすと俺はソファに座り込んだ。
「一体誰から…!?」
カッターを使い封筒を開けると中には写真数枚と2つ折りの便箋が1枚。写真を見た瞬間気持ち悪さがこみ上げてきた。
写真に写っているのは手を繋いで歩く眞仁 と俺の姿。それも7枚入っていた写真全てが異なる日付であることが服装から分かる。
「これ、1週間毎日撮られてたってこと?」
7枚ある意味はそういう事だろう。陽仁の写っている写真が1枚もないことから撮られたのは陽仁が産まれる前。全く気が付かなかった。
「便箋…!?どういう…?」
最後まで言葉にならなかった。綴られていた
『Ω の癖によくその人の隣を歩けるわね』の文。恐らくは女性。でも、俺の事を知っている女性なんて凛子 さんくらいだ。でも凛子さんにはこんなことをする理由がない。
「本当に誰がこんなことを…。」
姿も目的も分からない相手に本能的な恐怖と気持ち悪さを覚える。その日からその気持ち悪さと恐怖は薄れることなく俺を苦しめ始めたのだった。
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