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第46話

番外編「挨拶は一番に」 「格好変じゃない?俺。」 「大丈夫だ。」 「手土産これで良かったかな?」 「親は気にしないと思うぞ。」 「あとは、えっと…。」 朝から奥さんの落ち着きがない。夫の家に初めて行くのだから多少はしょうがない気がするが。 「陽茜、少し落ち着いたらどうだ?焦っても返ってミスが増えるんじゃないか?」 「そうだけどー!」 どうやら初めて知ったことだが奥さんは突然のことに弱いらしい。 今回の訪問のきっかけは父さんの鶴の一声だった。 「結局挨拶に来ていないじゃないか。」 と、事態が収束して2週間がたった頃に会社へいきなり電話を掛けてきてそ言い放つった父はそのまま陽茜にも電話をかけ、こちらには是非来てくれないかと丁寧な言葉で頼んだらしい。 実の子に丁寧もクソもないとは思うが、対応の差が著し過ぎないか? そんなこんなで、今回の訪問がに決まったのだった。あんなに反対していた母親がいる家に陽茜と陽仁を連れていくのは渋ったが兄と父が大丈夫だと言い張って埓があかず、今回は俺が折れた。まぁ何かあれば2人を連れてすぐ家を出ればいい。 「アッアー、アネ、アネッ。」 腕に抱えた陽仁がパタパタとリビングを行き来する陽茜に手を伸ばす。相変わらずキが言えない舌っ足らずな言葉で陽茜を呼んでいる。 「陽仁、陽茜は忙しくて構ってる暇が無いらしいよ。俺と遊んでいようか。」 「???」 流石に分からないらしく、コテンと首を傾げてこちらを見上げてくる。我が息子ながら既にマザコンで隙あらば陽茜にくっついているらしい 「俺では不満か?」 苦笑を零しながらそう問えば、腕の中の天使はニコニコしながら俺の顔の方へ手を伸ばしてきた。 「まぁと、まぁと。チュチュ!」 「ん?キスか?ませた子だなwほら。」 100%俺達のせいで、陽仁は生後8ヶ月そこそこのくせにもうキス魔だ。座った状態で抱いているとこちらの顔に手を伸ばし、「チュチュ!」とキスを強請るから堪らない。鳥の啄みの様な軽いキスを唇にしてやるとケタケタ笑って喜んでくれる。 大きくなってディープキスなんて覚えた日にはたまらないが今は愛おしい息子のスキンシップに思わず装甲を崩してまうのだった。

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