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第48話
リビングでの会合は僅かにピリピリとした始まりだった。
6人がけのダイニングテーブルに俺と陽茜が一辺に並んで座り、俺の隣に兄貴が座った。そして、
「おい、兄さん。大丈夫じゃなかったのか?」
俺達の2人の前に座った両親の一方、母親のほうからなんとも言えないオーラが滲み出ているのだ。
「大丈夫なはずだ。すくなくとも昨日俺と咲良を入れて話し合った時は大丈夫だった。」
コソコソと話し合う兄弟には目もくれず、父は陽茜に話しかけた。
「よく来てくれたね、陽茜くん。」
「い、いえ、こちらこそ呼んでいただいてありがとうございます。」
緊張してるのが丸わかりなガチガチに固まった声。そりゃ目の前に般若がいたらそうなるのも仕方ない。
「ははは、そんなに固くならなくていい。私達はもう家族なんだから。」
「…親父、隣の人は陽茜のこと認めてないようだが?」
「嗚呼、…菫、昨日夜話し合ったな。」
親父と俺に水を向けられた母親は、チラッと俺に目をやってから陽茜に向き直り口を開いた。
「陽茜さん、…」
「はい、、」
俺と兄貴と親父と咲良子さん、4人が固唾を飲んで見守る中。
「…貴方と眞人の間を引き裂こうとした事、謝るわ。ごめんなさいね。」
「はい…」
それだけだった。冷たくも聞こえる、だけど我儘に育った彼女の精一杯のケジメ。
「許さない、というのは簡単です。実際俺はまだ怒ってる。だけど、貴女を許さないと陽仁のためにならないから。」
陽仁を祖母の愛情を知らない子にしたくない。陽茜のそんな思いが伝わってくる。
それは母親にも伝わったらしい。小さく、本当に小さく、だけど確かに彼女はうなづいた。
「私の可愛い孫は今日は居ないのか?」
張り詰めた空気を切るように、親父が陽茜に声をかけた。
「あ、咲良子さんが…。」
「お義父さん、私が向こうの部屋で遊ばせてたんですよ。」
ベストタイミングで咲良子さんが陽仁を連れてダイニングへやってくる。陽仁を見ながらずっとこちらの様子を伺っていたんだろう。本当に出来た女性だ。
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