1 / 7

終わらない二人きり。

――セックスの後というのは どうしてこうも、身体が重くだるいのか。 シャワーを浴びようと、汗だくの身体を引き摺って、ベッドから降りようとしたが、腕を掴まれた。 「――なに。」 ベッドの上で俺を見上げる男は、情事直後にも関わらず、涼しい顔をしていた。 「まだ足りない」 嘘だろ、と口に出そうになる。 自分より二つ年上のこの男は、普段はもの静かな性格だが、ベッドの上では獣と化す。 遠い昔――二人が社会に溶け込んで、まっとうな仕事をしていたときから、この男には敵わなかった。 ――今もそう。 無表情で俺を見つめる、その黒い瞳の奥に宿る熱に、俺は目を逸らすことができない。 引きずられるように、男の胸へ潜り込んだ。 「今何時……?」 「知るかよ」 今の俺たちの日常に、時間の概念なんて――必要ない。 起きたいときに起きて 食べたいときに食べ セックスしたいときにセックスをし 眠りたいときに眠る ただ、それだけの淡々とした日常。

ともだちにシェアしよう!