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第14話 3年後
あれから、3年。無事、卒業式を終えて僕は実家に帰る。都筑からの手紙にずっと励まされてきた3年間。友達に合コンに誘われたりもした。同じ大学の子やバイト先の子に告白もされた事もあった。でも、地元に大事な恋人がいるんだって断ってきた。
都筑には届かなかっただろう、月1で出してた僕からの手紙。盆、正月に帰った時は親の手前、普通に兄弟として過ごした。春休みだから一旦帰省するけれど、春からは大学生。
また都筑とは離れ離れの生活だ。この3年間、気持ちが揺らぐことなく都筑だけが愛しい存在だった。
なのにまた大学で離れなきゃならない。今度は少なくて4年間。僕の人生は僕のもののはずなのに自由にならない虚しさ。都筑も僕を好きでいてくれているのに一緒にいられない辛さにたまに心が折れそうになる。
そんな事を電車内で考えながら、懐かしの自宅への最寄り駅に着いた。駅に都筑が迎えに来てくれていた。
「久しぶり、迎えに来てくれてたんだ」
都筑は涙を浮かべた満面の笑みで抱きついてきた。
「お帰り肇!母さんも父さんも許してくれたんだ!」
「何を?」
「俺達がお互いに想いあう事!」
「嘘だろ?」
「嘘じゃないんだよ!その証拠に…」
都筑が自分のディバックの中を探す。
「これ!肇が毎月俺宛に送ってくれてた手紙!母さんずっと取っておいてくれてて、俺達が変わらないようだったら、俺にくれるつもりだったんだって!」
「うそ、だ…だって、世間は許してくれない……」
「母さんと父さんは許してくれるって!」
「うそ……」
「うそじゃないから!手紙預かってきたから読んでよ!」
肇へ
毎月都筑に手紙を送ってくれてたわね。
一度も渡さなくてごめんなさい。
中身は見てないわ。
2人が3年間変わらない様子なのを、私と父さんで見てきて、話しあって、結論を出したの。
たとえ、世間や周りが許さなくても、
私達だけは味方になってあげようって。
2人とも、大事な自慢の息子なんだもの。
肇、都筑、愛してるわ。
念願の再会でしょうから、デートでもして、ゆっくり帰ってきなさい。
二人の好きなもの作って待ってるわ。
母さんより
「ねっ?分かった?肇?」
「こんな手紙、駅前で渡すなよ…」
短いけど、両親2人からの愛を感じて、涙が止まらない。涙脆くなったものだ。こんな僕たちを愛してくれてありがとう。
「えっ、どうしよ、デート…肇泣いてるし…そうだ!ホテル行こう!」
「はっ?!」
「それなら肇も思う存分泣けるし、エッチも3年以上してないしね」
凄くいいこと思い付いたでしょ?みたいな顔してこっちを見てる都筑。
「…泣き顔、これ以上外で晒すの無理だから…行く…」
「肇?素直に俺とエッチしたいからでいいんだよ?」
僕の耳元で、そう囁いた都筑。 3年以上してないけど、出来るかな?
こうして結局都筑のペース。甘え上手なんだよ、僕の可愛い弟は。
「じゃ、行こう」
「エッチしたいからでしょ?」
「そういうことにしとく…」
「もー、素直じゃないなぁ肇ってば~」
双子。元々は1つだった生命体。
2つに分かれて、お腹の中でも18週頃から
触れあいが始まる神秘的でもある存在。
そんな時期から触れあってるんだから、
心地好いのは至極当然。
これは仲良しが度を越えて、想いあってしまった2人の双子の話。
「ねぇ肇。春から1人暮らしでしょ?」
「大学行くからね、そうだよ。また離れ離れだよ。せっかく許してもらえたのに何なんだよ」
フフフ~。何でか楽しそうにしてるな、また離れなきゃならないのに。
「じゃーん!この部屋に2人暮らしなんだよ!」
アパートの間取りを見せられた。
「誰と?」
「俺と!」
「へっ?」
「俺も肇の行く大学の、近くの大学受かったの!高校3年間離れた分、一緒にいよーね!」
「都筑…今日ビックリさせすぎ…」
「いひひひひっ」
「可愛いすぎ!早く行くよ!」
「あっ、ムラムラしちゃったんだ!早いよ、肇!待ってよ~~」
都筑との二人暮らし。楽しくなりそうだとニヤけ顔を見せたくなくて早歩きで先を歩く僕と、待ってと着いてくる都筑。……すでに楽しいや。
僕達の未来はまだまだこれから。
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