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第13話 それが僕達の運命だったのかな

 とうとう、寮に入る日になった。実家に帰れるのは、盆と正月くらい。それまでは都筑と連絡をとることも出来ない。お互い、高校入学祝いでスマホを買ってもらったけど、都筑と番号交換できないように、出発する時に渡された。 「肇、分かって。あなたも私の大事な息子よ。2人とも大事で、寮生活出来そうなのは、しっかり者の肇の方だと思ったの。一旦離れれば……きっと可愛い彼女でも出来るわよ。2人とも私の自慢の息子達なんだから」 「うん、分かってるよ。都筑が寮だったら、僕も心配で何も手につかなくなりそうだしね」 「肇……」 「また都筑は泣いて~。もう高校生になるし、お兄ちゃんに頼れなくなるんだから、もうちょっとしっかりなさいね」 わざとらしいほどに明るいお母さんの声が、無理してることを感じさせる。僕たちはお母さんがこんなに悲しむようなイケナイ事をしてしまったんだなと思わされた。それならこの都筑を好きな気持ちはどこに閉まったら良いのだろう。 「都筑、泣いてもいいからがんばれよ」 「肇もね。俺の事忘れちゃダメだよ」 「泣くわけないし忘れるわけもないだろ。またすぐお盆に帰ってくるんだしね」 そうして泣きべそ顔の都筑を見ながら電車に乗った。  父親と母親で話し合って、双子の一時の気の迷いだろうから、少し距離を置けば、普通に彼女でも出来るだろうって結論に至ったらしいんだ。  3年か…僕達高校生にとって、3年て長いなって思った。でも、その間に都筑以外を好きになる可能性なんてあるの?っていうのが正直な所。都筑も全く同じ気持ちだったらしい。近くにいない、触れあえない、連絡もとれない、でも、瞼を閉じると、色んな表情の都筑を鮮明に思い浮かべることが出来るんだ。  手紙っていう連絡手段もあるな、って思ったのは、入学して少し生活が落ち着いた頃だった。これは、一か八かで、半分以上はお母さんが先に僕からの郵便物に気づけば都筑に渡さないだろうなってのは、容易に想像ついた。それでも、万に一つの可能性があるなら、1人で頑張ってるだろう、甘えたがりの都筑に送りたい。 そんな考えが浮かんだ中、届いたのは都筑からの手紙だった。  肇へ! 元気?ご飯食べてる?学校慣れた?    淋しいよ…。 でも、俺待ってるから、大丈夫! 肇以外好きになるとか、本当に考えられないし。 毎日肇の匂いがするベッドで寝てるんだ。 肇に抱き締めてもらってる気分になれるから。そしたら何日かたったらベッドが俺の匂いになっちゃった。 会いたいよ…。 肇からも手紙欲しいけど、高校生になって俺も、帰りが遅いから、多分お母さんが先に見つけちゃうと思うんだ…。 だから、俺からだけ送るからね。 国語苦手だし、文書くのも苦手だし、字も下手くそだけど頑張って書くから。 大好きだよ。               都筑より       読みおわって、寮のベッドに転がって1人でひとしきり笑った。それから、泣いた。都筑らしい手紙。泣き虫が……頑張ってるんだな。 届かないだろう事は分かったけど、いてもたってもいられず、僕も都筑宛に手紙を出した。

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