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第2話
始まりは、たまたま俺が酔っ払って前後不覚に陥り、間違って花街に入ってしまった時。
いきなり誰かにぶつかられた。ぶつかってきた本人は、俺の顔を呆然と見つめた。ぐずぐずに泣いていた。
こんなにも明け透けに表情を出す人間を見たことがなかった。
「お兄さん、こっちきてっ…」
そう言ってグイグイと腕を掴まれて引っ張られる。本当は、あの程度の力なら軽く解けたのに、何故か出来なかった。
俺が連れられた場所は少々お高めの宿。部屋に入ると、椅子に座らされた。
ぽたぽた涙を流すこの男は、大層綺麗だった。俺の腕を掴んだまま、流れる涙をそのままにしゃくりあげている。
子供みたいな姿だったが、不思議と綺麗に思えた。
珍しい、と俺は感じた。普段、この手の感想を抱かないからだ。綺麗やら可愛いやら格好いいなどという言葉とは無縁な生き物だったのだ、俺は。
…だからか。この男の気まぐれに付き合ってやる気になった。
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