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第10話

耳元で、名前を呼ぶ。いつものように、優しく、甘やかすように囁く。 彼の魂が還らぬモノとならないように。 存外に、中から吐き出されたものを掻き出す作業は苦痛を伴った。できるものなら、今すぐにでも俺のもので上書きしたい。 …本当に、本格的に惚れ込んでいる。 彼は、いつの間にか目を閉じて眠っていた。 彼の体を拭き、ベッドに寝かせる。サイドテーブルには、使用人に持って来させたお粥と、フルーツの盛り合わせ。 もぞもぞと彼を抱きしめながら布団に潜り込んだ。起きたら軽くでも食べさせなければならない。

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