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8.陵辱

人けのない、ダンボール箱が棚にびっしりと詰め込まれた倉庫のような場所に連れてこられた。 俺はその冷たい床に転がされる。 「へへっ、ずぶ濡れでホテルにも入りにくいからこんな所で悪いな」 もうどうでもいい。どこででもなんでもやればいい。 どうせ俺のことなど誰も気に掛けないし、相手がαだろうがβだろうがいくらやられても妊娠しないんだから。 男は硬いコンクリートの地面の上で俺を好き勝手にいたぶった。 前戯なんてものをする気はさらさら無く、薬のせいで内部は既に濡れていたとはいえ一切慣らすこともせずいきなり窄まりに肉棒を突き刺してきた。 「あぁああっ!痛いっ!痛い…」 「あ~、たまんねぇなぁ!すげえよお前の中、どうなってるんだ?Ωってのは皆こうなのか?」 俺が痛がっても全く意に介さずにガンガンに腰を振ってくる。 無理な体制で犯されて、肩も足も腰も痛い。 逃げずにさっきの男たちにやられたほうがましだったのかもしれない。 「ぐ…うぅっうっいた…いたい…」 固い地面に擦れる皮膚も、男の剛力で掴まれた部分も、折れそうなくらい捻じ曲げられた関節も痛い。 「おーおー、泣いてる顔も色っぽいなぁ。さすが最上級Ωは違う。見てるだけでイキそうになるぜ」 筋肉質ながっしり体型な上にサディスティックな男は、俺の顔を殴ると穴の締まりが良くなると言って何度も平手打ちしてきた。最後の方はもう、左耳は音を拾わなくなっていた。 横向きに寝かされ、片足を持ち上げられて立ち膝の男に容赦無く突かれる。 ガクガクと身体が揺れ、もう死にたいと思った。 このまま殺してくれ… どこにも帰りたくないし、こんな身体では帰れない… こんなに汚されてしまったら誰にも顔向けできない。 今まで頑張ってきたのはなんだったんだ…こんな目に遭うために俺は生きてきたのか…? こんな人生ならもういらないから早く殺して… 「しにたい…しにたい…」 男に揺すられる度に俺は掠れる声で呪文のように唱えていた。 「ははは!死ぬほど気持ちいいか?え?おら!おら!!」 頭の悪い奴っているんだなぁ…と漠然と思った。 社内でできが悪いと思っていた下級Ωでも、この男ほどバカではない。 俺は今までこういう人間と関わることなく生きてきた。 初めてその世界を垣間見て、そこで殺されるのだ。 殴られてパンパンに腫れているのが感じられる顔で、もう(まぶた)が分厚くなり塞がりかけた目から俺は涙を流していた。 「ちっ、顔が腫れてせっかくの美人がブッサイクになっちまった。萎えるだろが!」 そう言いながらまた殴る。 馬鹿すぎる…俺は笑えてきた。 「ひっ…ひっ」 泣きながらひきつけを起こしたように笑いだした俺を男は本気で気味悪く思ったのか、ようやく解放してくれた。 「あー、いい思いさせてもらったぜ。死ぬなよ~、面倒だからな」 ほらよ、と言ってなぜかペットボトルの水を棚から放ってきた。 これが代金ってわけか? 生きてる世界が違いすぎてもう、この男が何を考えてるのかさっぱりわからなかった。 俺は勿論ペットボトルを開ける力など残されていなかった。 本当にこのまま誰にも見つからなければ俺は死ぬだろう。 「はぁ…はぁ…はぁ…」 自分の呼吸音だけが耳に入る。 少しして目の前が真っ暗になった。 ……やっと死ねる……

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