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第1話

「ねぇ、まさるくんはなんでこんなとこで警察官やってるの?」 みーんみーん。なんて遠くの方で元気よく己の存在を主張する小さな生き物の声をBGMに陽が容赦なく照りつける波止場のコンクリの上で夏の日差しが似合わないなまっちろい足を晒して座る少年が自分の方を覗き込むようにして聞いてきた。 「お前こそこんなとこで何してんの?」 「俺は大学生だもん!」 「答えになってねぇよ。授業は?」 「今日は一限だけ」 ピース。と言って自分に手を突き出すその姿が年相応で可愛らしい。 「あっ!!」 その時ビュオ!と急に一風強く吹いたもんだから少年は被っていた麦わら帽子を咄嗟に抑えようと頭に手を伸ばしたがそれよりも先に風が帽子を攫っていくのが早かった。 「あーー!」 何も無くなった頭を両手で押さえて勢いよく立ち上がる。 「お前、どうすんだよあの帽子。勝己じいちゃんに借りたやつだろ?」 「うわー、どうしよ…許してくれるかな…。」 「こればっかりはどうしようもないな。」 音もなく水面に着地した麦わら帽子がゆらゆらと波に揺られて徐々に遠くなっていく。

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