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第2話

 少年。上原日和(うえはらひより)がこの島にやってきたのは突然だった。 島には小さな保育所と小中学校が一緒になったもの、高校はないかわりといってはなんだが国内でもそこそこ有名な海洋生物・海洋資源について学べる大学がある。 大学があるのは島の南側で東には町がある。 大学に通うために島に越してくるものは決して少なくはないがそのほとんどは大学の敷地内にある寮で暮らすのだが日和はそうではなくわざわざ街の近くにワンルームのアパートを借りて越してきた。  聞けばこの島に永住するつもりで来たと言うではないか。  田舎というのは良くも悪くも狭いコミュティで成り立っている。そこへ急にやってきた余所者であるはずの日和は何故だかすんなりとそのコミュニティに入ってきて当たり前のように暮らしていた。  自分が越してきた時には町民と打ち解けるのに何ヶ月もかかったと言うのに。 これも一種の才能なのだろうか。 「謝ったら許してくれると思う?」 人に借りたものを吹っ飛ばした責任に固い表情になっているが 「大丈夫だろ、じぃちゃんはそんなことじゃ怒らないよ」 グシャッと頭を掻き回してやればいくらか不安が消えたのか少し表情が柔らかくなった。  なんて言ったって日和は勝己じぃちゃんのお気に入りなのだ。 今日だって日和が暇そうに俺の後ろをついて歩いていたらそれをみたじいちゃんが「大丈夫」だという日和を無視して自分の麦わら帽子を無理やり貸していた。 それが帽子を飛ばしたくらいで怒るだろうか。 ちょっと想像して呆れてきた。 「だよね。」 帽子はすっかり仕方なかった。ということで片付けられた。 「ね、珍しいの釣れたらちょうだい!」 クーラーボックスの中を覗いてそう言うが中には小さなアジが数匹しかいない。 「いいけど期待するなよ」

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